『ヒーローではないけれど』チャン・ギヨンが過ごした“幸せな時間” 予知夢は覆せるのか?
Netflixで配信中の『ヒーローではないけれど』。チャン・ギヨンとチョン・ウヒ主演の超能力一家と詐欺師一家が繰り広げる物語が、クライマックス目前を迎え、盛り上がりを見せている。(以下、ネタバレあり)
チャン・ギヨン演じるポク・ギジュは、先祖代々特別なパワーを受け継ぐ“超能力一家”に生まれた“過去に戻る能力”を持つ超能力者だ。ギジュは過去に戻ることができるが、それには条件があり、「幸せだった過去の時間」だけに戻ることができるのだ。
一方、チョン・ウヒ演じるト・ダヘは、サウナを営む詐欺師一家の養女として結婚詐欺を繰り返していた。ある日、訪れた海で溺れているギジュを助けて、彼の命を救う。ダヘは、同時にギジュの母マヌム(コ・ドゥシム)に近づいて、ポク家に入り込むことに成功する。
マヌムが予知夢でギジュの死を見たことで、ギジュの父スング(オ・マンソク)、姉ドンヒ(キム・スヒョン)は動揺する。マヌムの予知夢はこれまでに外れたことがなく、マヌムはダヘに、ギジュが亡くなるまでの間を幸せに暮らせるように頼み込む。
何も知らないギジュは、ダヘとポク家で幸せいっぱいに暮らし始める。ギジュとダヘがいつの間にやら、とんでもなくラブラブになっているのが微笑ましい。チャン・ギヨンがチョン・ウヒに甘える姿は、大型犬が飼い主に甘えるような抜群のかわいさだ。黙っているとクールさを感じるチャン・ギヨンが、甘さを含んだ瞳でくしゃっとした子供のような笑顔をするなんて。幸せな2人にこちらも幸せな気持ちにさせられる。
そんな折、ギジュの娘イナが、同級生からのいじめで学校の体育館に閉じ込められてしまう。担任からの連絡で、イナが行方不明になっていることを知らされたギジュは、ダヘと共にイナを探しに行く。イナの行きそうな所がわからないギジュは、ダヘの“サウナ一家”の叔父ヒョンテ(ロイ)から、イナが普段時間を過ごしている場所を教えてもらう。ギジュは、イナのことを何も知らないことを痛感し、イナをひとりにしていたことを悔やむ。
イナを探すギジュとダヘの元に、未来からタイムトラベルしてきたギジュがやってきて(この場面で、虚空を見て「あ、来た!」というダヘに、未来の自分が見えないギジュが「俺?」と聞くのがなんともおかしい)、イナが体育館に閉じ込められていることを知らせてくれる。ダヘにしか見えない未来のギジュが、ダヘを見て悲しげな顔をしていたのが気になるところだ。
イナがダヘに「透明人間でいるほうがよかった」と泣きながら訴えると、ダヘは「友達の心を読んだ?」と尋ねた。イナは、「気に入られたかった、気の合う友達になりたかった、でも何が間違ってたのか分からない」と涙を流す。
ダヘはイナに「自分の気持ちは? 言葉にしなきゃ誰にも伝わらないよ」と伝え、続けて自分も透明人間だったが、透明なはずの自分にも色があったと過去の話をイナに聞かせた。そして、心を読むことで人を怖がるイナに、「あなたのもとを訪れる人をそんなに怖がらないで」「イナが聞いたのは、何層にも重なる心のほんの小さな破片かも。そうね、一瞬、横切った気分みたいな」と彼女を優しく励ました。ダヘの珠玉の言葉が、心に沁みる。
わたしたちは、自分の心も他者の心も完全に把握することもしないうちから、何層にも重なる心のほんの小さな破片、刹那横切った気分に振り回されて、自他をジャッジし心を閉ざしたり、攻撃してしまうこともある。