『光る君へ』松下洸平は心の動きをまなざしだけで表現する 周明はまひろたちの味方?
さて、第22回では松下洸平演じる周明が強く印象に残った。第21回の終わり、宋人たちが言い争う中、1人離れたところでたたずみ、騒ぎを見つめる冷静な面持ちが印象的だった。まひろと初めて言葉を交わした時も、周明はどこかかたい顔つきのままである。ただ、まひろに宋の発音で「ヂョウミン」と自らの名前を教える時、宋の言葉に不慣れなまひろに対して発音を正す周明の表情には優しさのある一面が垣間見えたし、宴の後、まひろが周明がやったように拳を合わせて「シェシェ」と宴の礼を言うと、初めておかしそうに笑った。
物語序盤では松下が台詞を発する場面はあまりない。だが、松下はまなざしだけで、周明の心の動きを巧みに見せる。まひろから宋の言葉で「また会いましょう」と言われた周明は、興味深そうにまひろが去るのを見つめていた。来航した宋人の朱らが本当に商人なのかなど彼らの真の目的が定かではないこともあり、周明からも謎めいた雰囲気が漂うが、まひろを追うまなざしにまひろへの関心が見受けられる。
鍼治療を行う周明の手元や為時を気遣う様子や声色も印象的だった。朱の前でも、為時の前でも、まひろの前でも、周明はあまり表情を変えないため、今はまだ彼が何を考えて行動しているのかが読み取れない。けれども、鍼治療を行う周明の姿は医師そのものだ。宋の言葉で「お大事に」と言う周明からは、為時を労わるやさしさが確かに感じられた。
周明は謎は多いがまひろや為時への敵意はなさそうに見えた。だが、第22回の幕引きには驚かされた。通事の三国を殺めたとされる朱への裁きは越前で行え、という道長からの返事の文に為時が頭を抱えていると、周明が見知らぬ者を連れてやってくる。
「話があって来た」
「朱様は通事を殺していない。証人だ」
はっきりと、日本語で、周明は為時に訴えかけた。周明は為時の目を見て、明瞭な言葉で主張する。真剣さが伝わる松下の立ち居振る舞いによって、周明の訴えに真実味が増したように感じる。一方、まひろは突然の出来事に驚き、息を呑んでいた。
物語の終わりに流暢な日本語を話すことでまひろを驚かせた周明が、まひろの越前での暮らしにおけるキーパーソンであることは疑いようもない。周明はなぜ、日本語が堪能であることをまひろたちに明かさなかったのか。宋人たちの真の狙いや通事の死に関係する人物、越前の事情はいかに。
■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、高杉真宙、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK