『6秒間の軌跡』が会話劇から導く生と死の“境界線” 宮本茉由はコメディエンヌの才能を開花

『6秒間の軌跡』が描く生と死の“境界線”

 そもそも星太郎がふみかの住み込みを断固として拒否していたのは、そうすることによって何か良くないことが起きるかもしれないという不安があるからなのだろう。細長い穴に落ちる夢や、家になつく野良猫などを、航からの何かの暗示と受け取った星太郎。航本人が未来なんて見えないと否定してもなお、まだ腑に落ちていない。その根底には、航がまだこちらの世界にいることが不自然だ、という考えがある。

 本来ならば、死後の世界にいるはずが、こちらの世界にいて、星太郎とひかりには見えているが、ふみかや他の人には見えていない。星太郎はそんな航の存在をふみかにどう説明するのかも一つの懸念事項として挙げていたが、説明がつかないことも世の中にはたくさんある。それこそ、普通の風呂と長風呂の境界線が曖昧なように、この世とあの世の境目も曖昧でぼやっとしたものなのかもしれない。だとしたら、人生において避けることができない別れの苦しみも少しだけ緩和されるような気がする。

 星太郎が望むなら姿を消そうとしていた航。だが、星太郎は航を自分の部屋に住まわせることを決める。航も口では「なんであんな男臭い部屋」と文句を言っているが嬉しそうだ。生きている人間と死んだ人間がゆるやかに共存する本作の世界観は不思議で、あたたかい。けれど、もちろん幽霊を怖がる人はいて、星太郎とひかりから航の存在を明かされたふみかは卒倒してしまう。白目を剥いてピクピクと痙攣する姿はなかなかのインパクト。次週はふみかが幽霊克服のために奮闘する。本作でコメディエンヌとして才能を開花させる宮本茉由からも目が離せない。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の2番目の憂鬱』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:高橋一生、橋爪功、本田翼、宮本茉由、小久保寿人、原田美枝子
脚本:橋部敦子
監督:藤田明二(テレビ朝日)、竹園元(テレビ朝日)、松尾崇
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)、後藤達哉(テレビ朝日)、山形亮介(KADOKAWA)、新井宏美(KADOKAWA)
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
主題歌:ケツメイシ「泣いても笑って」(avex trax)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:KADOKAWA
©︎テレビ朝日
公式サイト :https://www.tv-asahi.co.jp/6byoukannokiseki_2/
公式X(旧Twitter):@6secEx
公式TikTok:@6secex

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