吹奏楽経験者の視点から観た『響け!ユーフォニアム』 リアルな“キャラ描写”に思わず共感

吹奏楽経験者が観た『響け!ユーフォニアム』

 『響け!ユーフォニアム』の中では、コンクールメンバーを決めるオーディションを巡る人間関係のトラブルも比較的多く描かれている。オーディションに関しては、筆者の通っていた高校では行われておらず、“オーディション”が部内の人間関係にどう影響するのかは分からない。ただ、各楽器の1st(ソロも吹くエースのポジション)を巡っては、部員間で対立が生まれたこともあった。

 全国大会に出場した代のトランペットパート3年生は、例えるなら全員が高坂麗奈のようなタイプで1stを狙っていた。時には口もきかないほど関係性が悪化したこともあり、今考えるとどうやってパート練習していたのか不思議である。

 トランペットに限らないが、1stを吹く人は気が強いタイプが多い。本作に登場する高坂麗奈は登場人物の中でもかなりリアルなキャラクターであると言えるだろう。1年時から高い演奏レベルに達しているにもかかわらず、誰よりも向上心を持っていた高坂。彼女が仮に未経験者で入部していたとしても、3年生になるころには1stで吹いていたのではないかと思う。

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 吹奏楽部の顧問事情についても話していきたい。北宇治の滝先生は優しい口調ながら厳しいことも言い、“部員の自主性”を重んじた「怒らない指導」をしている。全国レベルの学校という視点で見ても、滝先生の描写もかなりリアルではないかと思う。北宇治高校が毎年「結果(全国大会出場・金賞受賞)を目指して厳しい練習をするか、楽しむことに重点を置くか」を全部員で決めているシーンも印象的だ。

 筆者が吹奏楽部員であった10年以上前はとにかく厳しく叱責する先生が多かったが、近年では全国大会に出場する吹奏楽部にも「怒らない指導」をする先生が増えているように感じる。

 このように『響け!ユーフォニアム』の内容は、現実の吹奏楽部とは少し異なる部分はあるものの、かなりリアルに描かれている。吹奏楽未経験者はもちろん、筆者のような吹奏楽経験者も共感しながら視聴でき、それも人気の理由のひとつだと考えている。

 全国大会に出場した吹奏楽部には、必ずといっていいほど多くの部員が集まる。北宇治も例外ではなく、アニメ第3期では100名に迫る部員数となったが、それでも低音パートに希望者が少ないのはあるあるだ。北宇治が出場する関西支部は、現実でも全国屈指の激戦区である。最後のコンクールにどのように向かいどんな結果を得るのか、今後の放送を楽しみに見届けたい。

■放送情報
TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』
NHK Eテレにて、毎週日曜17:00〜放送
キャスト:黒沢ともよ、朝井彩加、豊田萌絵、安済知佳、戸松遥ほか
原作:武田綾乃
監督:石原立也
副監督:小川太一
シリーズ構成:花田十輝
キャラクターデザイン:池田晶子、池田和美
総作画監督:池田和美
楽器設定:髙橋博行
楽器作画監督:太田稔
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:竹田明代
撮影監督:髙尾一也
3DCG監督:冨板紀宏
音響監督:鶴岡陽太
音楽:松田彬人
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:『響け!』製作委員会
©︎武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
公式サイト:https://anime-eupho.com/

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