柿崎ゆうじ監督×出合正幸×竹島由夏が語る、『コウイン ~光陰~』で追求した警備のリアル

出合正幸×竹島由夏×柿崎監督『光陰』語る

 本作は警護員の動きの緻密さや、専門用語が出てきても説明的なセリフが入らずに進行していくことで現場にいる緊迫感を味わえる作りになっている。出合と竹島は演技のリハーサルとは別に、警護員の動きの練習について聞かれると「(事前に)ありました」と回答。

 竹島は「前作から続投するキャストもいましたが、今回新しく入るキャストもいたので、改めて警護の練習をしましたね」と答え、出合は「車の乗り降りもそうです。警護対象者が車から下りてくる時の基本の動きはこう、といったベースの部分は叩き込まれましたね。モデルとなった監督の警備会社の警護演習も拝見させていただきました。でも、演習、じゃないんですよ。隊員の皆さん、本気でやっていらっしゃるんです。バーンとタックルして、バターンと倒れて。あのように実際の勢いでやるから、現場で動けるんだということを感じました。動きの流れを見るのではなくて、その場の空気を感じる、そういう貴重な機会を与えていただきました」と実際の警護演習を参考にしたことを語った。

 演出について、柿崎は「監督と俳優ですから、画の中でどういう見え方がするのかを考えて演出をするわけですよね。例えば俳優に、目線をこっちに振ってほしいという演出はできるわけです。でも、動きというのは、その意味がわからないとしょうがないんです。ですから、演出というよりも、警備の指導と一緒で、『あの森からライフルで狙えば400メートルくらいあるから充分届く、だからあそこを見る。ここはあそこの木陰に隠れているかどうかを見る』というように、実際の警護で襲撃されることを想定して説明しました。そうすると、目線は、狙われるであろう方向に対して向くようになります」と警護訓練のような演技指導となったことを明かした。

 そうした演技指導について、竹島は「監督とは別に監修の方が入ってアドバイスするのが通常だと思いますが、監督にその知識が全部あるので、目線のやり方も、その意味を全部教えてくださって。手の動きも、こっちでガードすればこっちで動ける、といった理にかなった身体の動きというものを教えていただきました」と、監督を務める柿崎の経験が活かされた現場だったことを語る。

 出合も続けて「実際は、動きが一連なんです。例えば、不審者が現れたら、身構えて、警棒を出す。その動きは別々で捉えがちですが、身構える頃には警棒を出しています。動きが流れているんです。流れているので、そこに表現を入れてしまうと、動きが嘘になってしまう。そのことを演じる我々は気づきました。気づいた反面、完成した映像を見ると、これはしっかり観てもらわないと、2つの動きがあることはわからないだろうなと思いました。一連の動きになっているので」と演技面での注目ポイントを明かした。

 柿崎は、出合と竹島が警備員としての動きに馴染んでいくのは早かったと語る。「俳優は、演じる役をどう自分に取り込むかだと思いますので、警備員、ボディガードとしての素地を実際に持ってもらおうと思い、いろいろ教えました。ふたりともそれを欲していたし、一番身に着けたいことでもあったでしょうから、身に着けた上で、今までの感性を活かして演じてくれたんだと思いますね。実際ふたりの動きを見て、警棒を持つ手だったり、無線機を持つ手だったりが、非常に馴染んで見えました。吸収は早かったです。例えば警棒を出すシーンなどは、手元を寄りで撮って、警棒が伸びるところをまた寄りで撮ると、画的にはいい表現かもしれないですが、民間警備員はそういうものを所持していることをあからさまに見せてはいけませんから、いつのまにか抜いているという演出をしました。そこはふたりがちゃんと理解して、やってくれましたね」と太鼓判を押した。

 本作では、先輩の殉職を胸に抱えながら仕事を続けていく2人、そしてチームの姿が描かれる。「守るべき人を守る」、「自分の命を大切にする」というテーマから、広い意味で「どう生きていくのか」というテーマまで描かれた本作について、柿崎が注目してほしい点は「目的を達成するために最善の努力をする警備員たちの心情を観てほしい」と語る。「刻々と選択肢がなくなっていく中で、それでも立ち向かっていかなくてはいけない。規模の大きい小さいに関わらず、大きいものは戦争でしょうけれど、大小に関わらず常に決断をして、そして動かなくてはいけない。その心情をぜひ観ていただきたいと思いますね。そこは、非常に皆が素晴らしく表現していたと思います」と熱弁。

 さらに、実際の警備の現場では言わないことを言った唯一のセリフについても明かした。「自分が脚本でひとつだけ、非常に葛藤しましてね。ほぼリアルに言葉を選んだつもりなのですが、一か所だけ、本来自分が、自分の警備会社では言わないことを言ったんです。今観ると、しっくりこないです。けれども、観た方にとっては、多分その方がいいのかなと……。隊長に対して『相手が武器を持っていたらどうしますか?』という隊員からの問いかけがあるんですね。その時の、本来の正しい解答として『迷わず先に殺せ』と言うと思うんです。警備員としての本当の仕事であれば。さすがにそういう表現はできない。防災無線を持ち帰るという目的があるシーンだったので、だから、『必ず死ぬな』と言わせました。その言葉の奥を、想像してほしい。目的を達成するために最善の努力をするということは、イコール、非常時には相手との壮絶な闘いもあるだろうが、勝ち抜いてこいという意味です。そういう、言葉ではなかなか表現しきれないその先を感じていただけたら嬉しいですね」と語った。

■公開情報
『コウイン ~光陰~』
4月12日(金)より、新宿武蔵野館ほかにて全国公開
出演:出合正幸、竹島由夏、山崎真実、大鶴義丹、伊藤つかさ、榎木薗郁也、中里信之介、野村宏伸
監督・脚本:柿崎ゆうじ
エグゼクティブプロデューサー:柿崎ゆうじ
プロデューサー:古谷謙一
特別協力:ビーテックインターナショナル
制作協力:イマジン、エーチームアカデミー
配給:フルモテルモ
企画・製作:カートエンターテイメント
2023年/93分/シネマスコープサイズ/5.1ch
©2023 Kart Entertainment Co.,Ltd
公式サイト:https://kouin-movie.com

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