NGT48 小越春花、舞台と映画を経て“見つけたいもの” 「お芝居の世界にある気がする」

NGT48 小越春花、俳優業への本音

「自分の探したいものがあるのはお芝居の世界なんじゃないかなと思う」

小越春花

――『私は怪獣』から1年余りが経って、意識の変化はありますか?

小越:『私は怪獣』の時こそ、お芝居のことが全く分かっていなくて、とりあえず大きい声を出さなきゃというような意識でした。徐々に役の感情が分かるようになってきてからは、そんなことは全く気にならなくなってきました。役としてどう生きたいのかを自然と考えるようになったり、それがお客さんにどうすれば届くのかを考えるようになっているのは、自分としては成長してるのかなと思います。でも、まだまだ難しいですし分からないことだらけなので、舞台ではとにかくガッツでいくと決めています。

――昨年6月には『まんが日本昔ばなし 舞台版「伝説・桃太郎~鬼の絆~」』への出演もあったわけですよね。

小越:『桃太郎』では空気感が全く違いましたね。後半に行くにつれて自分のアドリブを入れ始めたりしていて。ヒヤヒヤするんですけど、その緊張感を楽しめるようになってきてる感じ、ゾクゾクが病み付きになってきたのかもしれないって思っていました。そこは変わったところかもしれないです。私は根が真面目なので、ちゃんとやらなきゃと考えがちだったんですけど、舞台をやっていくにつれて少しずつほぐれてきたのかもしれません。

――今回の『9階団地のスーパースター』でもアドリブは入れたりしているんですか?

小越:ちょこちょこ挑戦していますね。コメディ要素が多いというのも入れやすいところではあるんですけど、ブッチャーとの絡みのシーンは毎回何が起こるのか分からないので、稽古でも言われてることは、先のことを知らないこと。先を知った上での作られたリアクションではなくて、その場で驚いて感情が湧いてくる。どうしても心配で準備をしたくなっちゃったりもして、そこが難しいし面白いなって思うところです。

――東京公演の新宿シアタートップスは小劇場なので、客席からリアクションが返ってくる面白さがありますよね。

小越:そうなんです。温かいお客さんばかりで助けられている感じがしますし、反応が返ってくるってこんな感じなんだって、自分の声が生で届いている感覚が楽しいです。

――春花さんはパンフレットの中でピカイチという役について、「周りに星を持ってる人はいるけど自分は持っていない、みたいな事は本当に分かる」と答えていますけど、これについてもう少し詳しく教えてもらえますか?

小越:アイドルをやっている時も、同期とかほかのメンバーはすごいなって思う瞬間がたくさんあるんです。私はダンスが全くの未経験だったんですけど、同じ未経験の子でも振り覚えが早かったり、立っているだけで目を引くメンバーを見ると、頑張ってもその人にはなれないんだって思うんです。お芝居をやり始めてからも同じで、自分はどれだけ練習をしても叶わない存在なんだって。それでも、私にだって何か誰にも負けないことがあるはずだって信じていて、その何かを探したいから、この仕事を続けられているんだろうなって思います。その何かがないのかもしれないと思った時に心が折れちゃったりもするんですけど、そういう時にこの作品がパワーをくれるというか。自分と同じピカイチのような存在がいて、ブッチャーという存在がいて。いろんな方の心に刺さるんじゃないかなって思いますし、私もピカイチからもらってるものがたくさんあるなと思います。

――先ほど、稽古に遅れて参加したと話していましたけど、その前は「私の卒業」プロジェクトの映画『こころのふた~雪ふるまちで~』を撮影していたんですよね。

小越:映像のお芝居を本格的にやったのは初めてで、楽しかったけど毎日大変だったなと思います。撮影期間中に『9階団地のスーパースター』の稽古動画が送られてきて、「私、ヤバい!」と思っても、明日のシーンの確認をしないとで。朝早くから夜遅くまでの撮影スケジュールでバタバタしていました。映画の撮影期間中は関西弁ではなく新潟の女の子の役で、自分自身をピカイチに切り替えるのはその撮影が終わってからでしたね。

――『こころのふた~雪ふるまちで~』で演じている吉田愛佳という役はどんな人物なんですか?

小越:愛佳ちゃんは普通の家庭環境なんですけど、どこか孤独を感じているんです。周りの子たちは夢や目標を持ったりしているけど、彼女は自分の気持ちに蓋を閉めてみんなとの間に壁を作ってしまっている。そんな子が少しずつ成長をして、自分のやりたい夢に向かって進んでいくまでの物語です。周りの人のことを羨ましいって思う気持ちは、ピカイチと通ずるところがあるなと思います。最終的に、愛佳ちゃんには心の蓋を開けてくれる存在の男の子が現れるんですけど、その男の子は夢とか目標をしっかり持っていて、いろんな人と関わっていく視野の広い子なんです。人とは違うんだという気持ちはピカイチも持っているし、愛佳を演じていてもそういう思いになりましたね。

――オーディションとワークショップはどんな期間でしたか?

小越:最初はめちゃくちゃビビっていました。オーディション会場の緊張感ってすごいんですよね。シーンとしてしている中で、たまにほかの子たちがすれ違う時に「頑張れよ!」って言っているのを見て、「あそこ知り合いなんだ……」みたいな変なソワソワがあったりして。でもそれを楽しめている自分もいたり。ワークショップをやるにつれて、コミュニケーションを取りながらお芝居を作っていったりとか。同年代の役者を目指している子たちからもらう刺激は大きかったです。特に今回は、ほかにモデルやグラビア、小さい時から役者をやっている子とか、普段は交わらない人たちとの貴重な機会がありましたし、人とこうやって出会えるのが面白いなと思いました。

――春花さんにとっての、もう1つの青春というか。

小越:そうですね。私にとってはこれが青春だったなって思います。私はアイドルをしていたこともあって、リアルな学校生活はみんなと壁を作ってしまっていたような気もするので。短い期間ではあったんですけど、みんなと仲間でもライバルでもあるみたいな、そういった高めあえる環境はありがたかったなと思います。

小越春花

――春花さんは俳優として着実に芝居の経験を積んできていますけど、演じることっていうのは楽しいですか?

小越:それ、今自分の中でどうなんだろうって考えていて。一言で楽しいとも言えない、難しいなって思いながらやっている感覚と苦しいというのもありますし。ちょうど今日の午前中、「私の卒業」の声録りをしてきて、編集された映像を観させていただいたんです。こんなふうに感じるんだって、予告の映像を観ただけで泣けてきちゃって。撮影期間は大変だったんですけど、これが誰かに届いて心に残った時に、お芝居をこれからも絶対にやりたいって思うんだろうなって。

――少しずつでも自信はついてきている?

小越:いや、全くですね。私はワークショップを経て、心がボキボキに折れまして。この先、私はどうやって生きていこうか、海に行こうか、山に行こうか(※おそらく「海の物とも山の物ともつかない」の意)と考えるくらいに完全に諦めました。それでもやめたくないと思うのは、自分の探したいものがお芝居の世界にある気がすると今は思っているので。声を大にして女優さんになりたいとは、まだあまり言えない気持ちなんです。

――その探してるものというのは、まだ見つかっていないと。

小越:見つかりそうにないですね。私は自分を俯瞰して見ているタイプなので、その役の感情で周りが見えなくなるということは今まで経験したことがないんです。精神的に、身体的に限界に達したこともないので、自分の限界を知ってみたいというのはあります。人と対話することもそんなに得意ではないので。でも、思ってることとか感じているものがあるから、それを表現できるのがお芝居なんだと思いますし、自分というのはお芝居じゃないと見つからないものなんだろうなって。自分に一番向いてる職業が役者かと言われたら絶対違うって思うんですけど。でも、自分の探したいものがあるのはお芝居の世界なんじゃないかなと思うから、頑張ってみようかなと思っています。

――頑張ってください。応援しています。一方で、NGT48としてはあまり活動できていない現状もありますよね。

小越:メンバーのグループLINEには、公演の反省会だとかリハーサルの映像が送られてくるので、「そうだ。今日は劇場公演の日だ」と思いながら、「私は稽古に行ってくるぞ」というふうに、違うところでみんなが戦っている感じがするのは、正直孤独に感じたりもするんですけど、だからこそ頑張ろうとも思います。今は外で頑張りたいと思って、こうして活動させてもらっているので。みんなの活動をSNSで見ることによって、自分の原動力にもなっている感じはありますね。この舞台が終わったらNGT48に帰れるんですけど、(本間)日陽さんの卒業コンサートが控えていたりするので、そこではもう一度アイドルとして輝けるように。ファンの方にもアイドルとしての姿をお見せできていないという思いはあって。その分、今はピカイチの姿を見ていただいて、ファンの方にも素敵な出会いがあったらいいなと思っています。帰ったら思いっきりアイドルができるように今は頑張りたいです。

――あと3カ月もすれば20歳の誕生日を迎えますが、19歳の1年を振り返っていかがですか?

小越:19歳の後半が特に外でのお仕事を頑張らせていただいていたのでギュッとした期間でしたし、不思議な1年だったなと思います。見える世界が違ったり、ご一緒させていただいた方からの刺激が大きくて、それによって自分の視野も少しは広がったかなと思いますし、人間として成長できた年ではあったと思います。20歳って大人な感じがして若干の焦りはあるんですけど、20歳になるということは信じていなくって。『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)みたいに、20歳になる前にもう1回人生がスタートするんじゃないかって疑ってはいるんですけど。ただ、誰かに今世を頑張れって私は言われてる気がしていて。なので、今世で何か花を咲かせられるように、とにかく今目の前にあることやご縁を大切にしていきたいなと思っています。

■公演情報
OFFICE SHIKA × 新宿シアタートップス『9階団地のスーパースター』
脚本・演出:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
出演:山﨑晶吾、小越春花(NGT48)、浅野康之、星元裕月、相楽伊織、前川ゆう、西田圭李、川平花、大野瑞生、後藤恭路、丸尾丸一郎
公式サイト:https://shika564.com/superstar/

■公開情報
『こころのふた~雪ふるまちで~』
3月29日(金)ユナイテッドシネマ新潟にて公開
6月14日(金)ユナイテッドシネマ豊洲にて公開
出演:阿部凜、伊賀光成、今森茉耶、榎本遥菜、大熊杏優、小越春花、草野星華、斎藤唯愛、下川恭平、鈴川紗由、世良大雅、髙岡優、髙橋海、田口音羽、八条院蔵人、姫子松柾、増井湖々、水瀬紗彩耶、美波、山北れもん、柚来しいな、渡邉多緒
脚本:高石明彦
監督:北川瞳
音楽:平野真奈
企画協力:井上拓生 岩﨑美憲、永川大祐、渡邊景亮(以上小学館)、宮本真行(松竹事業開発本部)
媒体協力:Steenz エルタマ
アソシエイトプロデューサー:平岡祐子
プロデューサー:飯田花菜子、成瀬保則、ヤマウチトモカズ
プロデュース:高石明彦、英田理志
企画・制作:The icon

■小越春花
https://ngt48.jp/profile/detail/133
https://ngt48.jp/

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