瀧七海、20歳で挑む舞台『るつぼ』と理想の俳優像への現在地 「“私らしさ”を発信する1年に」

『セールスマンの死』や『橋からの眺め』で知られるアーサー・ミラーの代表作を、上村聡史の演出により舞台化した『るつぼ』が、3月14日に開幕。セイラム魔女裁判という実際の事件を題材にした本作において、事件の発端となる少女・アビゲイルを演じる瀧七海に、舞台への思いや俳優としての目標を聞いた。
舞台開幕の前週に実施したインタビューの際、二冊のノートと手書きのメモを持っていた瀧。「言葉にするのが苦手なので、自分が考えたこと、お稽古でいただいたアドバイスなどをメモして、改善点をまとめています」と話してくれた。
「役と向き合う時間と、そこで得た経験を信じているので、稽古場に持って行く荷物も多くてカバンは重たいです。でも、これが私のお守りにもなるし、自信にも繋がるので、これからも続けていきたいです。妥協したくないものの一つですね」と真摯に話す彼女は、実際にあった事件をもとにした難しい作品にどう挑んでいるのだろうか。(吉田沙奈)
上村聡史の演出で変化した役へのアプローチ
――初日を前にした意気込み、手応えはいかがでしょう?
瀧七海(以下、瀧):いろいろ詰め込んでいて、気合は充分にあります。皆さんと過ごした稽古期間を信じて舞台に立ちたいと思っています。
――本作に初めて触れたときにどんな印象を受けましたか?
瀧:やっぱり難しいというのはありました。休憩を挟んで四幕構成という戯曲そのものの難しさもありますし、役どころ的にも自分に務まるかという不安がありました。でも、上村さんの演出に魅力を感じましたし、実際にあった事件という題材を咀嚼して演じる過程は自分の成長に繋がると思いました。
――演出の上村聡史さんが、インタビューで「アビゲイルを魔女的にしたくない」と話していました。役作りで意識した点はいかがでしょう?
瀧:物語の中で、坂本昌行さん演じるジョン・プロクターとアビゲイルの関係がきっかけで村が混乱に陥り、大きな事件になっていきます。アビゲイルが原因と言われがちですし、私も資料などを調べた時点では、アビゲイルが発端に見えていたんです。でも、上村さんの演出を受けて稽古を積み重ねていくと、実際はどうかわからないけど、今回の作品では、彼女だけが悪いんじゃないと感じました。少女たちのコミュニティ、村の人々の関係性などがあり、抑圧された中で爆発してしまった一人の少女だということがわかります。300年前たった今でも普遍的なものを感じますし、だからこそ長く上演されてきたんだと感じます。
――確かに、題材となった事件を知っているとアビゲイルが魔女狩りの発端という印象があります。その中で、既存のイメージと違うアビゲイルを作っていく大変さもあったのではないでしょうか?
瀧:最初の稽古で、アビゲイルに対する認識を大きく変えました。ジョン・プロクターが好きで、少女たちの中でボス的な存在だったことから、孤独を感じている人物なのかなと思っていたんです。でも、時代的に周囲からの抑圧とそれに対する少女たちの反発心の積み重ねがあった。さらにジョンとの関係性が生まれたことをアビゲイルの気持ちの変化に繋げています。アビゲイルという少女が周りの言動に対して素直に応えていることを意識して役作りをしています。
――舞台経験豊富なキャストも多いです。皆さんの印象や、稽古で学んだことなどはありますか?
瀧:ベテランの大滝寛さんや那須佐代子さん、大鷹明良さんは、上村さんとたくさん会話をされるんです。稽古で自分が提示したものに対してリクエストがあると、その場で次にどう作るか話して、お互い納得できるものを作っていく。その過程を見て、「これが舞台を作っていくということなのか」と再認識しましたし、すごくカッコいいと感じました。
ベテラン陣の背中から学ぶ「舞台を作っていくということ」
――稽古場でのエピソード、上村さんからの印象的なディレクションを教えてください。
瀧:座長の坂本さんが自分の軸をしっかり持っている方なので各々のペースがありつつ、食べ物やWBCの話で盛り上がっています。前田亜季さんがムードメーカーなんですが、野球がすごくお好きらしくて。あとは、私と他の方の差し入れがドーナツで被ってしまった日があったんですが、ドーナツってなんだかご褒美感があって皆さんで盛り上がりました。その日は上村さんから「今日いいね」と言われるくらいみんなの調子が良かったです。ドーナツを食べるときに上村さんが「いただきます」と言いながら両手で持っていてかわいい方だなと思いました(笑)。 上村さんから受けたディレクションでいうと、最初にアビゲイルの人物像についてお話を伺いました。そのときに、「白いキャンパスに周りの人の発言や行動が折り重なって塗られ、それが増して爆発するような存在であってほしい」とおっしゃっていて。無垢なものが周りの影響を受けて変質してしまうというのを意識しています。
――実際の事件をテーマにした作品ということで、「難しそう」「ちょっと怖そう」という印象を持っている人に、この作品の面白さや魅力をアピールするなら?
瀧:この作品は、登場人物たちの信仰心や権力、同調圧力などが描かれています。今はSNSの時代ですが、根拠のない情報や拡散力による被害が問題視される中で、この作品で描かれている人との関わり合い、自分が何を守り抜くべきかという問いかけに注目していただきたいです。
――この作品を通して、瀧さん自身はどんなメッセージを伝えたいですか?
瀧:登場人物の中にヘイル牧師という、神への信仰心がすごく厚い人物がいます。でも、セイラム魔女裁判を経て、信仰心を捨ててまで「命を救え」と導くようになる。舞台を観るとわかるんですが、敬虔な信者に対して、本来はダメなこととされている嘘の告白を促すんです。命の大切さ、ジョンとエリザベスの間にある愛の深さを見て、自分が何を守るべきなのかを選択していく。自らのプライドを捨ててまで問いかける姿勢がすごく好きです。観てくださる方も、たくさんの登場人物の中に共感できる人がいたり、「自分がこの世界に生きていたらどうするだろう」と考えたりできると思います。この戯曲が伝えたいもの、上村さんが伝えたいものを、私たち役者を通して受け取っていただけたら嬉しいです。

























