『ドラフトキング』は野球の見方を変える! ムロツヨシが教えてくれるスカウトの真の役割

『ドラフトキング』は野球の見方を変える!

 イチローも金本知憲も下位指名だった。3月6日にDVD-BOXが発売される『ドラフトキング』(WOWOW)はプロ野球の舞台裏を描く。2023年4月から6月にかけて放送された同作は、少しでも野球に関心のある人なら確実にハマる内容だ。

 プロ野球の風物詩であるドラフト会議。トップニュースで報じられ、将来を嘱望された高校・大学生、社会人がプロの門をくぐる第一歩となる。そのかげには、全国各地へ足を運び、何年もかけて無名の選手を追い続けるスカウトたちの努力がある。

 本作の主人公は、プロ野球チーム・横浜ベイゴールズのスカウト、郷原眼力(ムロツヨシ)。「眼力」と書いて「オーラ」と読む郷原は、その選手が将来どんな選手になるかという未来像を見抜くことができる。説明が遅れたが、タイトルの「ドラフトキング」は他球団が指名しない下位でプロ入りしながら、球史に残る活躍をするドラフトナンバー1選手のこと。プロ野球スカウトの究極の仕事は、ドラフトキングを発掘することである。

 ムロツヨシ演じる郷原はクセが強い人間だ。態度はぶっきらぼうで、選手獲得のためなら手段を選ばないやり方が行く先々で物議を醸す。人物の特徴をつかんで印象的なキャラクターとして差し出すムロの名人芸は、今作でもフルに発揮される。いかがわしさと一匹狼のオーラをまとう郷原はどこか謎めいていて、郷原が向かう先に自然と視線が引き寄せられる。

 郷原を語る上で外せないのが数々の印象的な“名言”だ。プロ野球は名言の宝庫だが、郷原も例外ではない。「スカウトマンは、眼が命」「裏金持ってこい」「スーパースターが必ず持っているもの、それは伝説」など記憶に残る台詞が次々と繰り出される。

 『ドラフトキング』のもう一人の主役が、宮沢氷魚演じる新人スカウトの神木良輔だ。選手時代、郷原に「プロには来るな。君は絶対に通用しない」と言われた神木は、5年間の二軍生活を経て郷原の同僚となった。神木の視点を通じて私たちはプロ野球スカウトの世界に足を踏み入れることになる。

 ドラマは郷原と神木のかけ合いを中心に進行する。各話に登場するのは将来のスター候補生だ。彼らのどこに郷原は目を付け、先行投資するのか。下位指名の選手がチームの大黒柱に成長する理由や、複数球団が競合する大本命を避けてダークホースを狙う戦略は、ふだん表に出ないドラフトの裏事情を知るようでとても興味深い。

 チーム間の駆け引きも描かれる。ライバル球団の大阪ホワイトタイガースに所属する古参スカウト・毒島(伊武雅刀)は郷原と犬猿の仲で、スカウト同士が有望選手をめぐって水面下で争奪戦を繰り広げる様子は企業サスペンスに通じるおもしろさがある。

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