『ゴールデンカムイ』俳優・玉木宏の美学がここにあり 鶴見中尉としての“マッド”さ

玉木宏が『ゴールデンカムイ』で魅せた美学

 玉木のシリアスな演技とコミカルな演技がいい具合にミックスされて抽出されれば、彼にしかなしえない鶴見中尉像を立ち上げられるはず。これが『ゴールデンカムイ』を鑑賞する前の気持ちである。

 実際のところ映画本編に登場する鶴見中尉は、あのマンガのコマに収められていた人物が私たちと同じ世界を生きているのだと思わせてくれるものになっている(むろん、生きている時代は違うが)。その身に血が流れ、脈を打っているのが分かる。呼吸をし、思考が高速で回転し、心が動いているのが分かる。つまり玉木はスクリーン上で、鶴見中尉として生きているのである。

 “シリアスな演技とコミカルな演技がいい具合にミックスされて抽出されれば……”などと先述したが、玉木はほとんどシリアスな演技に徹している。これは正解だろう。本作にはコミカルなキャラクターがほかに登場するし、ギャグシーンだってある。彼までそこに乗っかてしまうと作品のトーンが大きく傾く。

 これは演出によるものなのか、玉木の判断によるものなのかは分からない。鶴見中尉は特異なキャラクターだ。邪魔な存在の指を噛みちぎったり、主人公・杉元の頬に団子の串を刺したり……目を背けたくなるようなことを平気でやる。そもそも、画面に登場するだけで十分に怪人なのだと分かる。玉木は大仰な怪演に打って出るのではなく、自身のロートーンボイスを活かして淡々とセリフを発し、粛々とアクションを実践。そこにはある種のストイックさが感じられ、これが演技者である彼の美学として映る。

玉木宏の鶴見が最高の当たり役に 不可能に近かった『ゴールデンカムイ』実写化は大成功!

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 鶴見中尉はマッドな性質を持った非常にクセの強いキャラクターだ。彼の存在がどんなものであるかが、作品の手触りを大きく変える。それほどの重責を玉木は担っている。感情を自身の内部でたぎらせ、そのまま出力することなく抑え込むからこそ、そこから滲み出るものが鶴見中尉の“マッドさ”として映るのではないだろうか。

 作品の全体像を見据えた正確なポジショニングと、禁欲的ともいえるパフォーマンスーーこれが、血の通った鶴見中尉に感じる、俳優・玉木宏の美学である。

■公開情報
『ゴールデンカムイ』
全国公開中
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、泉澤祐希、矢本悠馬、大谷亮平、勝矢、高畑充希、木場勝己、大方斐紗子、秋辺デボ、マキタスポーツ、玉木宏、舘ひろし
原作:野田サトル『ゴールデンカムイ』(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:久保茂昭
脚本:黒岩勉
音楽:やまだ豊
アイヌ監修:中川裕、秋辺デボ
製作幹事:WOWOW・集英社
制作プロダクション:CREDEUS
配給:東宝
©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会
公式サイト:kamuy-movie.com
公式X(旧Twitter):@kamuy_movie
公式Instagram:@kamuy_movie

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