白石麻衣、コメディエンヌとしての才能開花　『恋する警護24時』で試される演技力の真価

　白石麻衣という俳優に対してどのようなイメージを浮かべるだろうか。俳優として表舞台に立つ彼女の姿を観て多くの方が感じるのは、やはりクールという印象だろう。これまで彼女が演じてきた役柄もどちらかと言うと、冷静で落ち着いたキャラクターが多かった。しかし、近年はさまざまな表情を見せることも多く、白石の秘めたコメディエンヌっぷりが堪能できる作品が続いている。

　かつては『やれたかも委員会』（MBS・TBS）や『俺のスカート、どこ行った？』（日本テレビ系）に代表されるシニカルな役柄や等身大の姿を見せてきたが、近年は『テッパチ！』（フジテレビ系）や『風間公親－教場0－』（フジテレビ系）における真面目でクリーンな役柄だけではなく、ヤクザの女組長を演じた映画『嘘喰い』のような硬派な作品においても存在感を発揮する。さらに、Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』ではアクションに挑戦し、以前よりも多彩な表情を見せるようになった。

　これまではある種、白石に対する固定化されたイメージが存在していたが、ここにきてイメージに囚われない表現者としての才能が開花した印象がある。そんな白石は2024年を迎えると、さっそく『侵入者たちの晩餐』（日本テレビ系）をはじめ、『恋する警護24時』（テレビ朝日系）などに立て続けに出演しており、2024年は白石の年となりそうな予感がする。

　それにしても新年1発目の出演となった『侵入者たちの晩餐』における白石の演技がいいアクセントを生み出していた。同作は第5回 アジアコンテンツ＆グローバルOTTアワードにて脚本部門にノミネートされた『ブラッシュアップライフ』（日本テレビ系）のバカリズムが脚本を手がけたドラマ。家事代行会社「スレーヌ」で働く菊地凛子演じる田中亜希子ら3人が、脱税疑惑を発端に白石演じる藤崎奈津美の自宅に侵入するというストーリーだ。あらすじを聞くと、一見硬派なサスペンスのようにも思えるが、実際はサスペンスコメディ的な要素が詰め込まれている。

　同作で描かれる白石は家事代行サービス会社「スレーヌ」のCEOで元グラビアアイドルという異色の経歴の持ち主。経歴だけ見ると、白石にも近しい役柄だろうか。社内では派手なファッションで丁寧な言葉遣いの中にある刺々しさからはどこか風格さえ漂っている。だが、配達業者に対しては人見知りな一面も映像では映し出されており、表と裏のギャップも印象的だ。

　そんな白石のコメディエンヌとしての才覚が見られたのは、豪邸に突如現れた侵入者たちとの対話シーンだ。たとえば、扉の中に隠れていた池松壮亮演じる配達員と初めて対面した際には、CEOとしての完璧な姿からは程遠い、大きなリアクションで慌てふためき、その緩急が素晴らしい。目と口を大きく見開きながら驚きを伝えるシーンは、白石の新たな境地を見た気がした。白石の渾身の演技によってシリアスな展開の中に喜劇が突然立ち現れ、物語にメリハリが生まれていたのもいい。