『ビバリウム』監督の“不気味さ”が癖になる “寄生”映画『NOCEBO/ノセボ』の恐怖
本作でもテーマになっている「信じたいものだけを信じてしまう」という人間の癖は、クリスティーンのように自身に不都合があるときによく発現しやすい。本筋から離れてしまうようではあるが、政治・経済・情勢的に不安定な日本の現状の中において、クリスティーンのようなヒステリックに陥っている人を見かけることが増えたことを思い出した。筆者の偏った見方かもしれないが、監督はそのような人々も視野に入れて制作していたのではないだろうか。
物語構成自体はシンプルでテンポ良く話が進んでいくので、良くも悪くも誰もが等しく楽しめる不気味さに仕上がっている。ただしあくまでも“不気味”ということであり、“恐怖”というとまた違うかもしれない。典型的なホラー映画ファンには物足りないかもしれないが、少なからず『ビバリウム』が好きな人は必ず楽しめる作品だ。
あるいは、帰省先で寄生映画を観るという体験が最も恐怖かもしれません。何はともあれ、リアルサウンドでは来年からも素晴らしい映画をご紹介していきます。みなさん良いお年をお迎えください。
■公開情報
『NOCEBO/ノセボ』
新宿ピカデリーほかにて公開中
出演:エヴァ・グリーン、マーク・ストロング、チャイ・フォナシエ、ビリー・ガズドン
監督:ロルカン・フィネガン
脚本:ギャレット・シェインリー
音楽:ホセ・ブエンカミーノ
編集:トニー・クランストン
撮影:ラデク・ラドチェック、ジャクブ・キヨフスキ
衣装デザイン:レオニー・プレンダーガスト
プロダクションデザイン:ルーシー・ヴァン・ロンクハウゼン
配給:クロックワークス
2022年/アイルランド・イギリス・フィリピン・アメリカ/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/97分/英語/日本語字幕:平井かおり/原題:Nocebo/レイティング:G
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公式サイト:https://klockworx-v.com/nocebo/