『下剋上球児』が大切にした“ドラマ”としてのリアル 新井順子P×脚本・奥寺佐渡子に聞く
「人生は敗者復活戦だ」
――特に「これはすごい」と思ったシーンは?
奥寺:どのシーンも素晴らしいですが、みんなから(無免許について)叩かれているときに、体がひとまわり小さく見えるところです。
――新井さんの中で、特に変化を感じたキャラクターはいますか?
新井:一番変わったのは椿谷(伊藤あさひ)ですかね。キャプテン役の日沖役の菅生くん、富嶋役の福松くんが卒業した頃に、伊藤くんに「君がキャプテンなんだから仕切って」と言ったら、「え、あ……はいぃ」と(笑)。でも、監督にも同じことを言われたみたいで、そこからは「演じていないときにもキャプテンとしてふるまわなきゃ」と意識するようになったと思います。実際に控室でどう過ごしていたかはわかりませんが、そういうところから表情が変わっていったのかもしれません。
奥寺:第7、第8話では顔つきが全然違っていましたもんね。
新井:本当に。あとは中沢くんも変わりました。彼はオーディションからものすごく成長しているんです。技量でいうと、星葉高校の羽谷(勝太)くんのほうが野球歴もピッチャー歴も長かった。でも、今回はあえておぼっちゃんっぽい中沢くんを選んで、「エース、やれますか?」と聞いたら「やれます」と。それから野球アカデミーに1カ月通い続けて、最後は野球の先生から「いいフォームだ」と褒められるほどに成長しました。監修の方も、「上達のスピードが凄まじい」と言っていましたね(笑)。それから表情は、みんな良くなってきていると思います。特に現3年生は一番長く現場にいて、亮平さんからも「このシーンは何でこういうことを言うと思う?」「今の芝居、ああだったよ」と声をかけてもらえるので、本当の学校のように亮平さんから得るもの、黒木さんから得るものがあったのではないかと思います。
――ドラマを作る上で、おふたりに「これだけは大切にしたい」という共通認識はありますか?
新井:『下剋上球児』では、ドラマ的な、劇的なことはやらないようにしています。
奥寺:でも、結果的にドラマになっていますよね。脚本を書く上では、現実でありそうだけど、ドラマとしてはちゃんと観てもらえる、というラインを探っていきました。
新井:実は、第9話の準備稿では「向かっている車が途中で故障して、会場にたどり着けないかも……つづく!」というパターンがあったんです。原案にも「練習に向かう路線バスが壊れて、近くの学校に頼み込んでバスを貸してもらった」というエピソードが書かれていたので、そういうハラハラも必要かなと思って奥寺さんに書いてもらったんですが、決定稿になったときに「これいる?」ということになって(笑)。
奥寺:あとは第10話まで書いたら、バスのトラブルを描く余裕がなかったっていう(笑)。
新井:それよりも、将来みんながどうなるのか、そっちに興味があるよねと。部活が終わっても学校はそこで終わりじゃないので、その先でこの子たちがどうしていくのかを描くことにしました。
――最後に、最終回の見どころをお願いします。
奥寺:南雲自身も高校時代に決勝戦で負けて苦い思いをしていて、もう一回ここで生徒たちにチャンスを与えてもらった。仙台育英の須江(航)監督も言っていましたが、「人生は敗者復活戦だ」というところが見どころですかね。
新井:野球の、その先にあるものが何なのかを観てほしいです。勝ち負けはさておき、試合の中で生まれる感情だったり、大会が終わったあと、南雲を含めた彼らがどういう道を歩んでいくのか、注目していただけたらと思います。
■放送情報
日曜劇場『下剋上球児』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、明日海りお、山下美月、きょん(コットン)、中沢元紀、兵頭功海、伊藤あさひ、小林虎之介、橘優輝、生田俊平、菅生新樹、財津優太郎、鈴木敦也、福松凜、奥野壮、絃瀬聡一、鳥谷敬、伊達さゆり、松平健、大倉孝二、小泉孝太郎、小日向文世
原案:『下剋上球児』(カンゼン/菊地高弘著)
脚本:奥寺佐渡子
プロデュース:新井順子
演出:塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成:佐藤美紀、黎景怡、広瀬泰斗
製作:TBSスパークル
©TBSスパークル/TBS(撮影:ENO)
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gekokujo_kyuji_tbs/
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