『きのう何食べた?』が提示した“人生のための別れ” 間違いを許すための離婚
祐がベトナムへ傷心旅行に行った後、ケンジは玲子から呼び出される。「お店に色々迷惑かけてるでしょ。ケンちゃんには一度きちんと謝っておきたかったの」と玲子は言った。玲子は離婚後の生活も仕事も順調な様子で、すでに新たな店を開いていた。玲子の名刺を受け取ったケンジは、玲子の苗字が“三宅”姓のままだったことに驚く。玲子は苗字を変えなかった理由を打ち明ける中で、ふと「それに、嫌いになったわけじゃないから。あの人のこと」と口にした。ケンジはその予想外の言葉に目を見張る。嫌いではないが離婚に至ったことに戸惑うケンジに、玲子は微笑みながらも凛とした口調でこう言った。
「嫌いじゃないけど、やっぱり許せない」
玲子を演じる奥貫の声色やまなざしには、玲子という人物が持つ意志の強さが感じられる。祐について「実際すごくいい人だし、子どもたちにとってもいい父親だしね」と話す玲子の言葉に嘘は感じられない。けれど、祐を許せないこと、祐のことを恨んだり憎んだりしてしまう感情があるのも本当なのだ。玲子が話す一言一言に、祐と一緒に過ごす時間の中で積み重ねられてきた思いがのせられている。玲子の言葉を通じて届く彼女の正直な気持ちはケンジにも届く。「間違いは消せないもんね」とケンジは納得した。
そんな玲子にも離婚を一瞬迷った時があった。娘の入学式に参列できるのが1人だけだと分かった時、祐は「そりゃあ、あなたが入りなさいよ」と言う。「ここまであなたが一番頑張ってきたんだから」と玲子を労う祐の言葉に、玲子の心は揺れた。祐の言葉を噛み締めるような玲子の面持ちから、祐のことをどうしても嫌いになれない玲子の心情がうかがえる。
玲子が一度はためらいながらも離婚を決意したことに、ケンジは「ダメだった?」と問いかける。玲子が下した別れの決断は、決してネガティブなものではない。
「間違いを許せるようになるために別れるの」
別れに対する考え方は人によってそれぞれ違う。玲子は祐を思う気持ちも許せない気持ちもある中で、自分の人生のために別れを選んだのだ。玲子のやわらかながらも芯のある声色が胸に響く。
■放送情報
ドラマ24『きのう何食べた? season2』
テレビ東京系にて、毎週金曜深24:12~放送
Lemino、U-NEXTにて、各話放送終了後から第1話〜最新話見放題配信
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、松本佳奈、平田大輔
音楽:福島節、澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作:テレビ東京、avex pictures
制作協力:オフィス・シロウズ
製作著作:「きのう何食べた? season2」製作委員会
©︎「きのう何食べた? season2」製作委員会 ©︎よしながふみ/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta2/
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公式Instagram:@movie_nanitabe