『力の強い女カン・ナムスン』オン・ソンウとピョン・ウソクの涙 善悪割り切れない展開に
Netflixで配信中の『力の強い女 カン・ナムスン』。配信後は、すぐに日本の「今日のTV番組TOP10」入りの常連で、グローバルTOP10ランキングでも7位と変わらぬ人気の高さだ。物語はいよいよクライマックス寸前を迎え、ピョン・ウソク演じる“悪役”リュ・シオとの全面対決まで秒読み状態に入った。
本作は、人気ドラマ『力の強い女 ト・ボンスン』のシリーズ作品で、代々女性に遺伝的な怪力が与えられる一族が世直しをする物語だ。主人公のカン・ナムスンを演じるのは、『イカゲーム』で世界的注目を浴びたイ・ユミ。ナムスンの恋の相手である麻薬捜査官カン・ヒシク役を『十八の瞬間』で繊細な演技を魅せたライジングスターのオン・ソンウが演じている。また、ナムスンに恋する不遇な過去を持つマフィアのシオを、『20世紀のキミ』で初恋のアイコンとなった同じくライジングスターのピョン・ウソクが演じ人気沸騰中だ。本稿では、第13話、第14話を中心に紹介する。
シオの魔の手からナムスン一家を守るために、ヒシクとナムスンは同居を始める。第12話ラストで、ヒシクがベッドにナムスンをいざなう一連の行動に思わず黄色い声をあげたくなった視聴者も多いのではないだろうか。ヒシクをベッドに寝かせて去ろうとするナムスンの腕をグッと掴むヒシク。韓国ドラマでは、去り際に腕を掴んで「行くな!(韓国語でカジマ!)」と言うシーンがよく差し込まれるが、筆者的にこの腕を掴む行為は、胸キュンランキングの上位である“壁ドン”を上回るのではないかと感じている。
さらに、その後ヒシクはナムスンに自分の過去を語り、涙を流す。これも韓国ドラマでよく見られるシーンで、韓国俳優たちはとにかくよく泣くのだ。ポロリと綺麗な雫を流したかと思うと、子どものように泣きじゃくり、嗚咽まじりの号泣で観る者の涙腺崩壊を誘ってくる。日本よりも喜怒哀楽の表現が激しい韓国では、泣いて叫んで笑って、とにかく全ての感情が熱を帯びている。本作のヒシクも、男らしい熱血刑事なのだが、ナムスンの前で涙を流し、ナムスンの胸に抱かれて眠る姿は幼児のようだ。ナムスンとヒシクは、ナムスンが望む通り、結婚秒読み状態になった。
一方、ナムスンに恋するマフィアのシオは、麻薬流通を暴こうとするナムスンの母ファン・グムジュ(キム・ジョンウン)の殺害に失敗し、娘であるナムスンを必死で探していた。シオが代表を務める流通会社ドゥーゴーで、亡くなった社員の弟をナムスンが支援していることを掴んだシオは、弟を会社へ呼び出す。そこで、ナムスンの電話番号を見せられたシオは、それが自分の登録しているツェツェグの電話番号であり、さらにナムスンの動画を見てツェツェグと同一人物であることを知り、怒りに震えるのだった。
とうとうこのときが来てしまった。シオが唯一の希望で光と思っていたツェツェグ=ナムスンの正体を知ってしまったのだ。
シオがツェツェグの正体を知ったときのピョン・ウソクの演技が素晴らしい。ナムスンの動画を見つめる眼差しからは、「これは本当のことなのか?」「俺が今見ているこの女性は俺の愛するツェツェグで、グムジュの娘ナムスンなのか!?」と彼の声が聞こえてくるかのようだった。そして、シオは頭を抱えて苦悩し、悲しみと悔しさに唇を歪め、これまで見せたことのない鬼の形相で激昂し、ナムスンの名前を怒鳴る。ナムスンの胸に抱かれ安心して眠るヒシクと対照的なシオの荒れ狂う波のような激情に、観ていて胸が苦しくなった。