『大奥』仲間由紀恵の一橋治済は原作に負けず劣らずの怪物に 恐怖の微笑みを体得するまで

仲間由紀恵が恐怖の微笑みを体得するまで

 仲間はかつて、フジテレビ・東映製作の映画『大奥』(2006年)で主演を務めたことがある。大奥の権力争いに巻き込まれる大奥総取締、絵島役だった。あれから17年、仲間は権力を掌握する側にまわったということになる。

 『TRICK』(テレビ朝日系)の山田奈緒子役で大ブレイクし、『ごくせん』シリーズ(日本テレビ系)のヤンクミ役が大当たりした仲間は、“ちゃきちゃきとしたお姉さん”のイメージが強かったように思う。NHK大河ドラマ『功名が辻』では“良妻賢母日本代表”のような山内一豊の妻・千代を演じたが、『美しい隣人』(カンテレ・フジテレビ系)と同スタッフが結集した『サキ』(カンテレ・フジテレビ系)ではサイコパスの主人公を演じて話題を集めた。『美しい隣人』のキャッチフレーズは「女は、苦しむ女を見るのが好き。」というもの。まるで治済役と一直線でつながっているようだ。『明日の約束』(カンテレ・フジテレビ系)では息子を支配する毒親を演じていた。

仲間由紀恵が全うした“語り部”としての役割 優子の物語が『ちむどんどん』に深みを与える

暢子(黒島結菜)からの熱烈な説得を受け、沖縄にようやくやってきた房子(原田美枝子)。しかし、彼女の旅の目的は暢子というより優子(…

 仲間の近作で印象深いのは、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』で演じた主人公の母親・優子だろう。心優しく、お人好しで、たくましい。そして息子にとことん甘い。作品の評価とともに毀誉褒貶が激しかった登場人物ではあるが、ある意味、理想の母親像の一つを演じきってみせた。

 “ちゃきちゃきしたお姉さん”期から“謎めいた女”期を挟み、“日本のお母さん”となり、“モンスター”へと到達した仲間ほど、大きくイメージを変えてきた女優もなかなかいないのではないだろうか。イメージが変わることをまったく恐れていないし、むしろ積極的に変えようとしているようにも見える。そしてこの『大奥』の治済役で一気に次のフェーズへと到達したように思う。お人好しの母親から血も涙もない権力者まで、もはやどんな役でも演じられるのではないだろうか。

 「医療編」のクライマックス、周囲の人間どころか息子の家斉まで信用できなくなった治済がどのような最期を遂げるのか。仲間由紀恵の演技とともに注目したい。

■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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