『ブギウギ』が教えてくれる“劇場”の重要性 蒼井優演じる大和が出した答えから考える

『ブギウギ』から考える“劇場”の重要性

 なぜ、私たちは劇場へと足を運ぶのだろうか。そもそも劇場とは、私たちにとってどのようなところなのだろうか。

 放送中の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)にて、ヒロイン・スズ子(趣里)の先輩である大和礼子(蒼井優)がこの問いにひとつの答えを出した。

「お客様はね、現実から離れたくて劇場にいらしてるの」

 そう、私たちにとって劇場とは、映画や演劇などが生む虚構世界に触れ、ほんのつかの間、現実世界から自らを隔離するアジールだ。私たちはここへ一時的に避難し、また現実世界へと還って生きていくため、そのために劇場へと足を運ぶのではないだろうか。

 とはいえ、この「劇場」で人前に立てる人間は限られている。それはスズ子たちの姿をとおして、私たちの誰もが再認識したことだろう。ダンサーだけでなく、ミュージシャンやコメディアンなど、いくらその業界に足を踏み入れたとしても、ひとりの“プレイヤー”として世間に認識され、迎え入れられるまでには相当なハードルがあるのだ。

 この時点で、どれだけスズ子が選ばれし立場に立っているのかが分かるだろう。しかし、自身の立場を維持するのは難しい。ライバルに奪われるかもしれないし、何か特別な理由があって不意に失ってしまうこともある。「自己表現」と「自己実現」は似ているようでまったく違う。スズ子の場合はまだ「自己表現」の領域。それならば誰でもできる。自分自身の表現欲求を満たしつつ、社会に参加するのが「自己実現」である。

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