『いちばんすきな花』“席”が示すそれぞれの居場所 “4人組”として繋がっていくゆくえたち

『いちばんすきな花』席が示す4人の居場所

 周囲に対して気を遣ってばかりだった4人は、もれなくその席に座り続けてきた。それはいい選択ではないかもしれないけれど、どこにも席がないよりはいくばくかはマシだと信じて。誰からも“席”を用意してもらえないことのほうが、よっぽど怖いことのように思えて。席さえあれば、そこに存在していていいと言われているのと同じだから、と。

 でも、居心地の悪い席はやっぱり素直には笑えない。思ったように言葉が出ない。そして、そんな自分を見て周囲の態度も変わり、座り心地は悪くなる一方だ。自分の席だけれど、そこに座っているのは自分じゃなくなっていくようで……。そうして苦しむ4人の姿に胸が痛んだ。

 だからこそ、4人にとって誰も「◯◯な人」と押し付けない、椿の家のダイニングテーブルの席はふんわりとしていて心地よかったのではないだろうか。強いて言うなら、「2人組になるのが苦手な人」たちの集まりでしかないからだ。考えてみれば、年齢や性別、職業などの共通項のない状態で、真新しい人間関係を築けるチャンスなどなかなかない。

 2度めまして、3度めましてではあるものの、まだお互いのことは断片的にしかわからない。でも、どこか似ているものがあるのを感じる。それがどちらかといえば、痛みの部分だということもわかる。だから、少しずつ慎重に。これまでそれぞれが受けてきた息苦しさを感じさせないように、ゆっくりと近づいていきたい。だから、次にまた会いたい気持ちも、ぶつけるのではなく、そっと置いていくのだ。

 「これ忘れていきますね。忘れ物です」そう言って紅葉が、椿の家の玄関にハンカチを置く。それを「うん。わかった」と、そっと受け入れる椿。紅葉の気遣いが、そして椿の受け入れ力が、本来こうして報われてほしかったという形に落ち着くのが嬉しい。そして、去り際にゆくえの昔話に心が苦しくなったと素直に話して手を振る夜々に、すぐチョキを出して見せて場を和ませようとしたゆくえの頭の良さも……。

 ともすれば、誰とも繋がれないと思っていた4人が、徐々に4人組として繋がっていく。その優しい世界を見届ける、この視聴者の席もなんと座り心地のいいことか。彼らがあのダイニングテーブルに着席するのと同じくらい、あの時間が恋しくなっていく。ところが早速「忘れ物をしちゃって」と、戻って来たのは、椿の元婚約者の純恋(臼田あさ美)だった。果たして、純恋は何を忘れたというのだろうか。それは椿の心にまた大きな変化をもたらすようで、気が気でならない。

■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichibansukina_hana/
公式X(旧Twitter):@sukihana_fujitv
公式Instagram:@sukihana_fujitv

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