『カンダハル 突破せよ』監督が語る、ジェラルド・バトラーへの信頼と絆

『カンダハル 突破せよ』監督が語る“絆”

ーーなるほど! 「モラル」は監督の作品に一貫してあるテーマですね! では続けてもう一つ、個人的に感じている監督の作風について質問です。監督の作品には「司令部でふんぞりかえっている人間」ではなく、「現場で血を流して体を張る人間」に対する敬意があるように思います。そして、そういったスタンスが僕は大好きです。監督はスタントマン出身で、非常に長いキャリアをお持ちですね。やはり現場で実際に体を張った人間としての経験が、映画の中にも投影されているのでしょうか?

ローマン・ウォー:YEAH!(※今日イチ大きな声で)その通り! 僕は現場で仕事をしている人、“ワーキングパーソン”に興味があるんだ。たとえば政治や法律自体よりも、それらを押し付けられた市井の人々の方が気になるんだ。『カンダハル 突破せよ』でも、政策を決定する立場の人間は、意図的に登場させていない。登場するキャラクターは、政策を実行に移すため、現場で体を張って働くワーキングパーソンたちだ。もちろん、政策を決定するような人々にも僕の映画を観てもらいたいが、それよりも市井の人々に作品を観てもらいたい。そして先ほど言ったように「自分だったらどうするか?」と考えてほしいな。僕は黒でも白でもない、人間のグレーゾーンに興味がある。そして、そういったグレーゾーンは、誰の心にもあると思うんだ。

映画『カンダハル 突破せよ』予告編

ーーありがとうございます! 僕自身も徹夜多めなワーキングパーソンなので、ワーキングパーソン映画としても監督の作品が大好きです! ただ、それと同じくらい監督の撮る刑務所を舞台にした作品が好きなので、是非とも極限状態が似合うジェラルド・バトラーさんが、刑務所に入れられる映画を観てみたいです!

ローマン・ウォー:ジェラルドは刑務所に入れたいな(笑)。

ーーよろしくお願いします!

ローマン・ウォー:実は、今『ブラッド・スローン』(2017年)のテレビドラマ版の話が出ているんだ。僕はアメリカの刑務所の中で起きる暴力の連鎖にとても興味がある。仕事を通して、軍人や諜報機関へのリサーチをしているんだが、程度の違いはあれど、戦場と刑務所はとても似ているんだよ。「暴力の連鎖の中で、どうやって生き延びるのか?」というテーマには、これからも飛び込んでいくつもりさ。あ、もちろん映画監督としてだ! 塀の向こうには入らない!

ーー僕も監督には、ムショに入ってほしくありません!

ローマン・ウォー:そういうことは起きてほしくないよね。

ーーそれでは、最後の質問です。ここまで話した通り、本作はモラルとの葛藤や、暴力の連鎖、現場の人間の目線といった、非常にシリアスな要素を含んでいますが、しかし一貫してエンターテインメント性のあるアクション映画でもあります。そんな監督にとって、アクション映画の魅力、こだわりについて聞かせてください。

ローマン・ウォー:アクションを描くときは、感情が乗っていなければならない。スタントマン時代にはビルから飛び下りたり、全身に火をつけられたり、時速200マイルの車で横転したよ。よく「どういう気分なんだ?」って聞かれたものさ。でも、それは僕の仕事だった。僕の感じた興奮や恐怖感を、そのまま観客に味わってもらうことが仕事だったんだ。感情が備わっていないアクションは、アクションのためのアクションになってしまう。願わくば、今後も観客に感情が乗ったアクションを届けていこうと思っているよ。

■公開情報
『カンダハル 突破せよ』
全国公開中
出演:ジェラルド・バトラー
監督:リック・ローマン・ウォー
脚本:ミッチェル・ラフォーチュン
提供:クロックワークス、アスミック・エース
配給:クロックワークス
2022年/イギリス/ DCP5.1ch/シネマスコープ/英語/119分/G/原題:Kandahar/字幕翻訳:平井かおり、字幕監修:大久保義信
©COPYRIGHT 2022 COLLEAH PRODUCTIONS LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:klockworx.com/movies/kandahar
公式X(旧Twitter):@KlockworxInfo

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