『18/40』瞳子と有栖の縁に心温まる “奇跡の出会い”を実感する優しいラストに
振り返れば、『エイフォー』では出産や育児のシーンも、しっかり時間をかけて丁寧に描かれていたのが印象的だった。有栖と祐馬の恋も、2人だけの恋心の盛り上がりだけでなく、祐馬が常に有栖の息子・海を気にかけ、子育てにも協力的な態度を見せるなど、愛情を深く注いでいることがしっかり伝わってくる描写になっていた。だからこそ、2人の恋を私たちも安心して応援することができたし、市郎も「祐馬になら任せられる」と思えたに違いない。
しかし、そんな幸せな有栖と祐馬、そして海を見ていると、海の実の父である康介(八木勇征)のことが頭をよぎって仕方なかった。有栖の妊娠を聞いて海外へ逃げてしまったことを後悔し、有栖とやり直したいと申し出た康介。しかし、結局2人が寄りを戻すことはなかった。その後、康介は父としての責任を果たすべく、アルバイトをしながら養育費を支払う姿が映し出されていた。
最終回では康介のその後が見えずに少し気になったが、韓哲プロデューサーから「有栖は今後も、定期的に康介や麻生家に海との面会を行い、その成長の様子を見せてあげたいと思うんじゃないかと」(※)とのコメントがあったので、康介もまた別の形で幸せになっているのだと信じたい。
あの日、市郎に殴られる覚悟で瞳子の家に乗り込んでいった康介。そして、涙をのんでガラガラのおもちゃを託し、有栖と海の幸せを願って身を引いた。そんな康介なら、あの母親に守られていた頃には描けなかった作品が生み出せるようになっているのではないか。寂しさ、悔しさ、罪悪感……そんな言葉にし難い感情が、彼の芸術に還元されていってくれたらと願う。
きっと手に入れた奇跡と同じくらい、手に入らなかったこともまた、私たちの人生には大きな意味を持つ。ドラマの終盤に映し出された5年後の光景は、瞳子と加瀬が2人で仲睦まじく過ごす姿だった。もしかしたら、2人はあのまま子どもを持つことを諦めたのかもしれない。もちろん欲したものをすべて手にすることができればいいけれど、「生きていればいろいろある」のだ。
うまくいったり、いかなかったり、遠回りしたり、諦めたり、結局諦めきれなかったり……。そんな「いろいろ」を見聞きしたり、あるいは経験するうちに、チャレンジする前から「どうせうまくいかない」なんて思い込もうとしていないだろうか。あるいは「大人になったら、夢を見てはいけない」なんて自分を縛りつけていないだろうか。
思い通りにいかないことばかりだけれど、その都度新しい夢を見て、追いかけて、応援してくれる誰かと出会って……そうして生きていこうではないか。『エイフォー』はそんなポジティブな気持ちにさせてくれるドラマだった。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2023/09/post-1428968.html
■配信情報
火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も~』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:福原遥、深田恭子、鈴鹿央士、上杉柊平、出口夏希、長澤樹、八木勇征(FANTASTICS)、嵐莉菜、シルビア・グラブ、髙嶋政宏、美村里江、松本若菜、片平なぎさ、安田顕
脚本:龍居由佳里、木村涼子
プロデューサー:韓哲、荒木沙耶、内川祐紀
演出:福田亮介、松木彩、宮﨑萌加
音楽:吉俣良
主題歌:Ado「向日葵」(ユニバーサル ミュージック)
製作著作:TBS
©TBS
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