『18/40』瞳子と有栖の縁に心温まる “奇跡の出会い”を実感する優しいラストに
「なんか不思議ですね。娘の家で、本当なら会うこともなかったはずの方と、こんなふうに……ウッフフ」
「ハッハハ。本当ですね。生きてるといろいろありますね」
そうお茶を飲みながら語らう貴美子(片平なぎさ)と市郎(安田顕)の言葉に、心がジワッとした。たしかに、2人の娘である瞳子(深田恭子)と有栖(福原遥)が出会わなければ、こうしてゆっくりと話すことなどない、赤の他人のままだった。
それは、薫(松本若菜)も、加瀬(上杉柊平)も、祐馬(鈴鹿央士)も、留依(長澤樹)も、世奈(出口夏希)もそう。この瞳子の家に集まっている様子が、いまやあまりにも自然で、そして心地よくて、つい忘れてしまいそうになった。こんな出会いは「奇跡」なのだと。
火曜ドラマ『18/40~ふたりなら夢も恋も〜』(TBS系/以下『エイフォー』)最終回は、私たちの周囲にはそんな奇跡の出会いで満ち溢れていることを実感する優しいラストとなった。あの日、お腹をおさえて倒れ込みそうになっている有栖のそばに、偶然出くわした瞳子。しかし、この2人の縁は、その出会いより前からあったのだ。
有栖の母・真理(美村里江)の話になると、瞳子が思い出したように1枚の写真を持ち出す。そこには、亡くなる前の真理が、瞳子と同じ美術の社会人講座に通っていた姿が。そこで2人は意気投合し、お互いの夢を語り合う仲だった。「夢は持った瞬間に、半分叶ってるんだと思う。だって夢のことを考えるときって幸せでしょ? それが原動力になって、あと半分頑張れる!」そう生き生きと語る真理の言葉に、瞳子も感銘を受けていた。
私たちの心は、毎日誰かの言葉を受けては膨らんだり、へこんだりしながら、形を変えていく。きっと瞳子の心も、意識していないレベルで真理の言葉に影響を受けたのだろう。真理との出会いを通じて、誰かの夢を応援することもまた、自分自身が夢を持つのと同じくらい素敵なことだと思えた。だから、夢と現実の間でいっぱいいっぱいになっていた有栖のことが見捨てられなかったのではないだろうか。
あの人との出会いが、あの人に言われた言葉が、きっと「今」に繋がっていく。人生とは、そういうものなのかもしれない。瞳子との出会いで夢に近づくことができた有栖。一方で、瞳子もまた有栖と出会ったことで、今一度「自分のギャラリーを持つ」という夢を追いかけるパワーをもらったとも言える。
大人になり、それなりのキャリアを築くと、何も持たなかったころよりも、夢を追いかける勇気が持てなくなることがある。夢に向かってチャレンジすることで、今持っているものを失ってしまうのであれば、現状維持するほうがリスクがない。そんなふうに考えてしまうのが、むしろ大多数だろう。
だが、生きることとは新陳代謝なのだ。バージョンアップしていかなければ、だんだんと停滞してしまう。気づけば、そこにしがみついてしまうことになる。ときには何かを手放したり、あるいはやり方を変えていく勇気を持つ必要があるのだ。
40歳から夢を叶えようと挑戦する瞳子の姿を見て、きっとBVアートの後輩たちも影響を受けることだろう。かつて、真理の存在に心を動かされた瞳子のように。そして、瞳子が「女性男性関わらずセクハラ・パワハラのアップデート」をするようにと進言した黒澤社長(髙嶋政宏)も、部下との距離感を改めたこともあり、BVアートの未来はまた少し明るくなった。
それまでの自分に縛られずに、新しい自分を受け入れていく勇気を持つ。それは恋も同じかもしれない。もはや1人で生きていける瞳子にとって、加瀬のプロポーズに答えることはリスクばかりが目についた。瞳子の体では、2人の間に子どもを授かることは無理かもしれない。そのことで、加瀬を悲しませてしまうかもしれない。ならば、自分じゃない人と結婚したほうが加瀬にとって幸せなのではないかと。
しかし、加瀬の幸せは瞳子といることなのだと正面から言われ、瞳子は結婚を決意する。プロポーズの返事と言いながら、婚約指輪を差し出して自ら改めてプロポーズをする瞳子。そして、「そういうのって、はめてくれるもんなんじゃないですか?」とはにかむ加瀬もまた愛らしい。きっと少し前のドラマでは見られなかったプロポーズシーンだろう。ドラマだってこうしてアップデートしていくということだろうか。