『らんまん』を不朽の名作にした阿部海太郎の劇伴 そっと彩りを添える音楽の素晴らしさ
ピアノの音色が優しく物語全体を包み込むのは、第1週のタイトル「バイカオウレン」だ。それは万太郎の亡き母・ヒサ(広末涼子)が愛した花。その楽曲を聴いていると、彼女が生前、万太郎や綾(佐久間由衣)に向けていた穏やかな眼差しが脳裏に浮かぶ。そうしたキャラクターのイメージソング的な側面を持っているのも阿部の楽曲だ。例えば、「ヤマザクラ」は万太郎の祖母・タキ(松坂慶子)をイメージしているのか。タイトルからは想像もできぬ力強い打楽器の音が響き、女手一つで造り酒屋「峰屋」を切り盛りしてきた大女将の風格を漂わせる。また、多くの人の印象に残っているのが佑一郎(中村蒼)が登場する際にいつも流れているBGMだろう。サウンドトラックには未収録ではあるが、映画『ライオンキング』を彷彿とさせる壮大な音楽は佑一郎が相手にする自然の大きさを物語っている。
弦楽器が不穏な旋律を奏でる「ヘビイチゴ」に新たな展開の予感。「キンセイラン」に未知なる冒険の幕開けを、「ヤッコソウ」には植物採集に出かける万太郎の軽やかな足取りを感じるなど、その時々の場面を彩ってきた阿部の劇伴。阿部は「ドラマの音楽にもある種のトレンドがあると思いますが、自分としては、10年、20年後にも色あせないものになればいいなと思っています」と語っている(※)が、その言葉通り、最終回を迎えた後も彼の音楽はいつでも私たちを『らんまん』の色鮮やかな世界に導いてくれるだろう。
参考
※ https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S15720744.html
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK