『ばけばけ』トキが任された“リテラリーアシスタント”とは? 錦織が支えていたヘブンの執筆

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で描かれる熊本での生活にも慣れてきたこの頃。相変わらず司之介(岡部たかし)の博打にはハラハラさせられているが、女中としてやってきたクマ(夏目透羽)が加わった松野家の日々はいつものように騒がしい。
熊本に赴任してきてまもなく、学校が無くなるかもしれないヘブン(トミー・バストウ)が教師の仕事を追われる可能性が浮上する。それでもヘブンが海外で出版した本は順調に売れていることから、彼が執筆に打ち込めるようにと、松野家総出で手立てを考えることになった。

トキたちがネタ探しの道中に出会ったイセ(芋生悠)や茂吉(緒方晋)が語った古い言い伝えは皆にとって周知の話だったが、イセの悲しい身の上話を聞いたトキが起こした突飛な行動と、呪いや怪談を信じているからこその“幸せの考え方”にヘブンは感銘を受けた様子だった。「アナタ、コトバ。アナタノ、カンガエ。ワタシ、ヒツヨウ。モットモット、ネガイマス」とヘブンは頼み込み、トキも彼の言葉を受け入れる。
今まではトキが語った怪談を通してヘブンが書くことの着想を得ることはあれど、執筆するヘブンにトキが前のめりになって直接情報を共有することはなかった。トキがヘブンから任されたのは、いわゆる「リテラリーアシスタント」と呼ばれる役割で、単なる助手ではなく作家の創作活動を支える存在だ。
実際にヘブンのモデルとなったラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の執筆には、妻のセツの尽力があったといわれている。怪談作家として名を馳せることになる小泉八雲が記した再話文学は、セツが語り部となった多くの怪談が基になった。彼女がリテラリーアシスタントとして作家活動を支え、“ヘルンさん言葉”と呼ばれる独特の日本語で言葉を交わしながら、自身が好きで集めた怪談を語り継いだからこそ、八雲は毎年のように著作を刊行することができたのだ。

これからトキとヘブンが公私ともにパートナーとして歩んでいくのであれば、言葉でのコミュニケーションは必須になってくるだろう。英語を話せないトキもまた、リテラリーアシスタントを務めるからには、物語に登場する人々の感情の機微や日本語の微細な意味の違いをヘブンに伝えなければならない。丈(杉田雷麟)と正木(日高由起刀)に教えてもらいながら英語の勉強に励む様子が描かれているが、その道のりはまだまだ時間がかかりそうだ。
元々、松江に滞在していたときに、ヘブンのリテラリーアシスタントを務めていたのは錦織(吉沢亮)だった。ヘブンの執筆の助けになる題材探しのために、古くからの言い伝えが残る城山稲荷神社や月照寺に連れていったり、彼に不満があった際には英語でコミュニケーションを取ったり。その役割はヘブンの日本での生活を来日した当初から見守り、時間をかけて信頼関係を育んでいた錦織だからこそ成り立っていたともいえる。第76話でヘブンから「アナタ、オカゲノデキタホン。ダカラ、イケンホシイ」と完成した本を受け取った錦織の感慨深げな表情は、彼がどれほどヘブンに献身的に尽くしていたのかを物語っていた。

ヘブンの良き理解者であった錦織の不在は、熊本で執筆が進まない理由のひとつ。同僚であるロバート(ジョー・トレメイン)や作山(橋本淳)との交流はあるものの、錦織のように彼の仕事や生活を四六時中気にかけてくれるわけではない。
さらに、第22週「アタラシ、ノ、ジンセイ。」では、イライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)からの手紙をきっかけに、ヘブンの未知の世界への探究心が刺激される。トキにとっては気が気ではないだろうが、リテラリーアシスタントとしての役割を任されたことによって、2人の心の距離がどのように変化するのか楽しみだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























