『呪術廻戦』「渋谷事変」鑑賞前に“思い出しておきたいこと” 凄惨な物語への心構え
舞台がリアルな「渋谷」の街だから感じるロマン
最後に、架空都市ではなく現実の街を舞台にしている『呪術廻戦』だからこそ、「渋谷事変」も実際の渋谷の街を知っているともっと面白く感じることに触れておきたい。しかも、“ハロウィンの渋谷”といえば例年DJポリスが出動するなど、全国規模でニュースに取り上げられてしまうほど人混みがすごいことも多くの人が認知することだろう。そんな喧騒の中で呪術テロが起きてしまったら、一体どうなるのか。『劇場版 呪術廻戦 0』では、同じく人の行き交いが多い新宿や京都がテロ現場となったが、劇中ですでに一般市民の避難を済ませていた。そのおかげで非術師の怪我人が出ることは(少なからず劇中で描かれている部分では)なかったが、それは夏油が事前に高専側に対して時間と日時を宣告していたから防げたこと。渋谷のテロに関しては、今回高専側に何も知らされていない。そういった事実から、彼らの動きがすべて後手に回ってしまうこと、一般人が巻き込まれる可能性も大いにあることを考えると、やはり“大惨事”は免れないのだ。
とはいえ、劇中のキャラクターが自分の知っている場所、行ったことのある空間を動き回る様子が見られるのも楽しみの一つ。「渋谷事変」の舞台は、2020年に営業が終了し今は解体された東急百貨店東横店を中心に半径400メートルとなる。その周辺……井の頭線改札口や副都心線、松濤通りや明治通り。それらの場所がすべて、呪霊と呪詛師、呪術師の全面戦争の舞台となるのだ。放送開始まで、この400メートル区間を歩き回ってみると各話をより楽しめることだろう。実際にその地と訪れなくても、Googleマップを使って地形を把握するだけでキャラクターの位置感や移動の仕方が理解しやすいのでおすすめしたい。筆者は松濤通りや道玄坂付近の会社で働いていたことがあり、井の頭線を使ってマークシティ直結の出口から出たり、昼休みに渋谷・東急本店の本屋に足を運んだりしていた。毎日のように通っていたあの道で、“あんなこと”が起きていたと考えると、ワクワクすると同時に落ち込んでしまう。
『呪術廻戦』はもちろんフィクションでありながら舞台が全く同じ、しかも各所の距離感やルートまで緻密に再現された現実の渋谷を描くからこそ、2018年に起きた出来事がパラレルワールドのように感じる面白さがある。もしかしたら、私たちは彼ら呪術師が戦った末の5年後を生きているのかもしれない。そんなふうにふと、思ってしまうのだ。
■放送情報
『呪術廻戦』第2期「懐玉・玉折」
MBS/TBS系にて、毎週木曜23:56~放送
閑話(後編) 8月17日(木)放送
「渋谷事変」編:8月31日(木)〜放送
キャスト:中村悠一、櫻井孝宏、遠藤綾、永瀬アンナ、子安武人
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史、小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
オープニングテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」(Sony Music Labels)
エンディングテーマ:崎山蒼志「燈」(Sony Music Labels)
©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp