『18/40』安田顕の全身から伝わる娘への愛情 夏ドラマにシングルファザーが集結?

『18/40』安田顕から伝わる娘への愛情

 早くも折り返し地点を迎え、多くが後半戦に突入しつつある2023年夏ドラマ。今期はジャンルの偏りがなく多種多様な作品が出揃う中、ふとある共通点に気づいた。それは主人公の片親設定が非常に多いということ。さらに言えば、『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)の夏海(森七菜)、『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』(TBS系)の有栖(福原遥)、『何曜日に生まれたの』(ABCテレビ・テレビ朝日系)のすい(飯豊まりえ)はいずれも男手一つで育てられている。

 シングルファザーと一口に言っても、性格や娘との関わり方は様々。例えば、夏海の父・亮(山口智充)は飲食店を経営しているが、客に喧嘩をふっかけたり、お人好しが過ぎて大事なお金を家族に相談もなく他人に貸したりと、少々困ったところがある。亮とは対照的に、娘に対する献身ぶりがいたわしくも思えるのが、すいの父・丈治(陣内孝則)だ。10年間引きこもり状態にあるすいとの生活を、不安定な漫画家の収入で守ってきた丈治。すいの社会復帰を急かすことなく見守る姿勢は好感が持てるが、一方で「コロナの行動制限があったから」という彼の口癖は真正面から娘と向き合ってこなかったことへの言い訳に聞こえなくもない。

 そんな2人のちょうど中間で、厳しさと優しさの両方を持って娘に接しているのが、有栖の父・市郎(安田顕)。彼を見ていると、娘を持つ父親というのはなんて不器用で愛おしい生き物なのだろうと思わされる。特に有栖の赤ちゃんが産声をあげた瞬間、市郎の見せる泣き顔があまりに可笑しくてなぜか泣けてきた。

 有栖はまだ多感な18歳という年齢のわりに冷静で大人びているが、それは市郎の関わりによるものだろう。付かず離れずという言葉がぴったりで、一人娘なんて本来なら心配で心配でいちいち干渉したくて仕方がないはずなのに、市郎は見守りに徹してきた。悩める思春期の娘に父親としてどう向き合えばいいかわからない部分もあったのかもしれない。それでも学校の行事にはできる限り都合をつけて参加したり、かわいらしい巾着袋に入れたお弁当を持たせたりと、一つひとつの行動から有栖に対する愛情は十分すぎるほど伝わってくる。

 そんな市郎の接し方が有栖の自立を促したのだろうし、思春期で口をきかない時期があっても迷惑だけはかけないようにしてきたのだと思う。だからこそ、大学まで行かせてもらったのに妊娠したなんて簡単には打ち明けることができなかった。有栖が恐れていたのは「堕ろせ」と言われることよりも、何より“自慢の娘”と言ってくれた市郎の失望した顔を見ることだったんじゃないだろうか。だけど、その遠慮が市郎にとっては悲しいし、寂しい。「お母さんだったら」と思わず有栖が発した言葉はきっと、市郎自身が妻を亡くしてから何度も思ってきたことだろうから。

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