『お嬢さん』から『二十五、二十一』、そして『悪鬼』へ キム・テリの変幻自在の演技力

『悪鬼』キム・テリの変幻自在の演技力

 韓国ドラマ『悪鬼』がディズニープラス「スター」で配信されている。本作は、『キングダム』などの大ヒット作を手がけたキム・ウニが脚本を担当し、『VIP-迷路の始まり-』のイ・ジョンリムと『花たちの戦い~宮廷残酷史~』のキム・ジェホンが監督を務めるオカルトミステリーだ。

 人の目には見えない邪悪な「悪鬼」に取り憑かれた女ク・サニョン(キム・テリ)と、悪鬼を見ることができる民俗学者ヨム・へサン(オ・ジョンセ)が、悪鬼にまつわる真実を追いながら疑問の死の真相を暴いていく。ヘサンに「悪鬼が憑いています」と忠告されて動揺するサニョンだが、民俗学教授である父親ク・ガンモ(チン・ソンギュ)の遺品の髪飾りを受け取ってから、身の回りでは数々の原因不明の事件が起きるようになる。

 ダブル主演となるキム・テリとオ・ジョンセの実力派ふたりが、全編にわたり緊張感が漂うシリアスな展開に埋もれることなく、観る者をスリリングな世界へと惹き込んでいく。ヘサン役のオ・ジョンセは、第56回百想芸術大賞で『椿の花咲く頃』、続く第57回百想芸術大賞で『サイコだけど大丈夫』と、2年連続でTVドラマ部門の助演男優賞を受賞した名バイプレイヤーでもあり、演技に隙がない。また、ガンモ役のチン・ソンギュは映画『スペース・スウィーパーズ』で全身タトゥーにドレッドヘアの宇宙船エンジニア役として登場し、キム・テリ演じる勝気な船長とチームメイトとして共演していたが、『悪鬼』では重要な鍵を握るサニョンの父親役に。今回は父娘というガラリと違う役どころを演じている点も興味深い。

 そして何より、悪鬼に取り憑かれたサニョンと、本来のサニョンという、ふたつの顔を見事に演じ切っているキム・テリに注目したい。キム・テリは、1990年生まれの現在、33歳。大学の演劇サークルを経て劇団に入団し、演技力を磨いた後、日本ではR-18指定となったパク・チャヌク監督の映画『お嬢さん』のオーディションで無名ながら1500倍の競争率を勝ち抜き、主演のひとりに抜擢。1939年の日本統治下の朝鮮半島を舞台にした今作で、孤児の少女スッキを演じたキム・テリは、同性愛や過激なラブシーンにも挑戦し、支配から逃れ自由を獲得した女性を堂々と演じている。結果、キム・テリは各映画賞の新人賞を総なめにし、今作が女優としてのターニングポイントとなった。

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