山時聡真、『君たちはどう生きるか』主人公役でさらに躍進 朝ドラ『エール』との繋がりも
思い返すと『千と千尋の神隠し』(2001年)のハク(入野自由)や『ハウルの動く城』(2004年)のハウル(木村拓哉)など、ジブリ作品に出てくる男性というのは、比較的寡黙で口数が少ない。本作の眞人もそういう人物だ。そのため、山時の声を聞くことは、ほかのキャラクターに比べると少ないかもしれない。しかし、その分、爽やかな声は、物語の中で凛と響き、心に残るものがある。さらに、自分の置かれた状況に戸惑いを見せる前半の眞人と、様々なことを経験した後半の眞人の声は全く異なるように感じた。眞人は物語が進んでいくにつれ、明らかに何かに対して腹を決め、自分の意思で全てを選び取っている。それに合わせて声色も力強いものになっていっているのだ。
眞人は物語の中で吉野源三郎の同名小説を読んでいる。宮﨑監督が80歳を越え、10年ぶりに監督を務めて描きたい映画のタイトルがこれ、ということでなんだか哲学的な問いを向けられているように感じていたのだが、この映画を観終わった今、眞人の姿そのものが、その答えのひとつなのだろうと考えてしまう。その上で、自分はどう生きるのか。華やかな映像を目の前にしながら深い思索ができるのがこの映画の凄さであり、おもしろいところなのだろう。
■公開情報
『君たちはどう生きるか』
全国公開中
原作・脚本・監督:宮﨑駿
製作:スタジオジブリ
主題歌:米津玄師
©2023 Studio Ghibli