是枝裕和も驚いた天才子役・柊木陽太 『怪物』『最愛』『PICU』で示してきた逸材ぶり

『PICU』涙なしには見られない子役の演技 柊木陽太、稲垣来泉らによる名演の数々

“子どものためのICU”であるPICUで奮闘する若手小児科医・志子田武四郎(吉沢亮)の姿を描いている『PICU 小児集中治療室』…

 2022年の10月クールに放送されていた吉沢亮主演の月9ドラマ『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)では、ドラマ後半のキーパーソンとなる患者としてレギュラー出演をしていた。柊木が演じた圭吾という12歳の少年は、拡張型心筋症を患い函館の病院で治療が難しくなったことから転院してくる。心臓移植を拒むなど、命に関わる病を抱える少年の複雑な心理状態を非常にうまく体現していく。しかも稲垣来泉演じる同級生とのささやかな初恋譚であったり、ドラマ終盤では吉沢演じる主人公の心を動かす役割を担うなど、このドラマに欠かせない重要な役どころであったわけだ。

 それからたった半年で(おそらく撮影は『怪物』の方が先であったわけだが)、カンヌのレッドカーペットを歩き一躍世界から注目される俳優になるとは。その急成長ぶりには驚かされるが、それこそが子役を見る楽しみというものだ。しかも柊木は、この『怪物』がスクリーンデビュー作でもある。

 先日、早稲田大学で是枝監督と坂元裕二が登壇した講義を兼ねたトークイベントが行われ、そのなかで是枝監督は柊木のオーディション時や撮影時のエピソードを語っていた。是枝監督が普段の子役オーディションで行なっている“台本を渡さずに演じてもらう”やり方と、“事前に台本を渡して演じてもらう”やり方を両方試したところ、柊木も黒川も後者のほうが上手かったこと。そして間隔を空けてから2度目のオーディションを行なった際、柊木は事前に告知されずとも1カ月前に覚えたシーンを完璧に覚えていたという。彼の驚異的な記憶力に、是枝監督はすっかり脱帽していた様子で当時を振り返っていた。

 そうしたこともあってか、撮影現場では前述した是枝流の子役演出を取り入れずに、大人の俳優と同じように役を一緒に作っていったそうだ。それもまた、『怪物』がいつもの是枝映画とは違う雰囲気を放っていた理由のひとつなのかもしれない。また是枝監督は柊木について「なんでもできちゃう子なので、役について質問をしてこないタイプ」だったとも振り返っている。まさしく天才肌の俳優となれば、なおさら近い将来に大成する姿を見るのが楽しみになってくる。

■公開情報
『怪物』
全国公開中
監督・編集:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
企画・プロデュース:川村元気、山田兼司
音楽:坂本龍一
製作:東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福
配給:東宝、ギャガ
©2023「怪物」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
公式Twitter:@KaibutsuMovie
公式Instagram:@kaibutsumovie

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