『マルセル 靴をはいた小さな貝』この喋る貝は何者!? リアルとフィクションが入り交じる

『マルセル』現実と虚構が入り交じる

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、寿司屋で必ずつぶ貝を頼む花沢が『マルセル 靴をはいた小さな貝』をプッシュします。

『マルセル 靴をはいた小さな貝』

 2022年、国内で人気を博したアニメ『PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL』の小野ハナ監督にインタビューをする機会があった。小野監督に「ずばりストップモーションアニメの良さは何ですか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「やっぱり“そこにいる”ということですね。(中略)体がそこにあって、居場所もそこにあって、我々の作ったものが映り込んでいて、そういう関係性が半分リアルなんだけど、決して現実にはなり得ないというか」

 実際にセットを組み、パペットのコンディションに振り回されながら撮影を行うストップモーションには、CGでは再現しきれない“実在感”が宿る。そんなストップモーションの魅力を最大限に引き出したのが、『マルセル 靴をはいた小さな貝』だ。

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 『マルセル 靴をはいた小さな貝』には、さまざまな“リアル”と“フィクション”が入り交じる。実写とストップモーションをミックスして作られた本作では、監督自らが出演し、マルセルという2.5センチの貝のような生き物にインタビューを行う。フィクションでありながら、“ドキュメンタリー”という体で進んでいくのが特徴だ。

 ドキュメンタリーとは、リアルをそのまま映そうとしても、作り手が意図を持って切り取る以上、どこかフィクションになってしまうものだ。本作でも、「僕の声は入れたくないから、質問しないで」と言う監督に、マルセルが「わかった」と言いながら、ついカメラの向こう側にいる監督に話しかけてしまうという一幕がある。フィクションの存在でありながら、“うっかりミス”をしてしまうマルセルの微笑ましさは、『トイ・ストーリー』のNGシーンを観たことがある人にはきっと伝わるだろう。

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