『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』は“黄金の思い出”になる! TV放送を楽しむポイント

『最後の聖戦』を楽しむポイント

ヒロインの役割を担う、ショーン・コネリー

 こうしてヒロイン不在となった『最後の聖戦』だが、そんな空いた隙間を埋めるのが意外にもショーン・コネリー演じるヘンリー・ジョーンズ博士だったりする。これまた個人的意見だが、前2作における「細かなミスをして主人公の足を引っ張るくせに文句だけは一丁前で、キャーキャー言いながら最終的に悪いやつの人質になる」ヒロイン像は相当鼻につく。“役割”という概念がそのまま人の形をしているようなのがまず鼻につくし、女性キャラクターに対する「こんなものでいいだろ」みたいな態度が透けて見えるのも鼻につく。なんならとってつけたような活躍シーンすら鼻につく。昔の映画に言っても仕方がないことだが(それはそれとして前2作ともに名作である)。

 しかし『最後の聖戦』の面白いところは、そんな役割をヒロインにではなく男にして父親であるヘンリー・ジョーンズ博士に負わせたことだ。恐らくスピルバーグ監督は、明確な意図を持って“役割”をショーン・コネリーに負わせたのではないかと思う。それで全く鼻につかなくなるのかというと、全然そんなことはない。そもそも「細かなミスをして主人公の足を引っ張るくせに文句だけは一丁前で、キャーキャー言いながら最終的に悪いやつの人質になるキャラ」は老若男女鼻につく。しかし制作者の「こんなものでいいだろ」という態度が明確に消えてなくなったのと、インディがちゃんとやらかす父親にムカついてくれるので、最終的にユーモラスなやらかしとして受容できる。

 本記事は子供の視点を交えて『最後の聖戦』についていくつか語ったが、最後に言いたいことは、名作映画を観るのにベストなタイミングなど存在しないということだ。なぜなら名作映画は何時如何なる時でも超面白いからだ。強いて言えばあなたがはじめて名作映画を観たその瞬間こそがベストタイミングと言える。なのであなたが名作映画を観ていないことを気に病む必要はない。「〇〇を観ていないのに、映画好きを語るなんて」などというどうしようもない言説が時折見られるが、我々は映画好きを語るために映画を観ているのではない。映画を楽しむために映画を観ているのだ。というわけで気兼ねなく『最後の聖戦』を観てほしい。馬を駆り黄昏を抜けるハリソン・フォードとショーン・コネリーらの姿は、どんな時でも黄金の思い出として記憶されるはずだ。

■放送情報
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』
日本テレビ系にて、6月23日(金)21:00~23:29放送
※35分枠拡大
監督:スティーヴン・スピルバーグ
製作:ロバート・ワッツ
原案:ジョージ・ルーカス、メノ・メイエス
脚本:ジェフリー・ボーム
音楽:ジョン・ウィリアムズ
製作総指揮:ジョージ・ルーカス、フランク・マーシャル
撮影:ダグラス・スローカム
編集:マイケル・カーン
プロダクション・デザイン:エリオット・スコット
出演:ハリソン・フォード、ショーン・コネリー、デンホルム・エリオット、アリソン・ドゥーディ、ジョン・リス=デイビス、ジュリアン・グローバー、リバー・フェニックス、マイケル・バーン、ロバート・エディソン、アレクセイ・セイル
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