『わたしのお嫁くん』は男女の“役割”に一石を投じる 高杉真宙と波瑠がたどり着いた真理

『わたしのお嫁くん』“役割”に一石を投じる

 山本知博(高杉真宙)と速見穂香(波瑠)の日常的な微笑ましいすれ違いが満載だった『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)第9話。

 「知博くんにはちゃんと実感してほしいの。自分が愛されてるんだって」と珍しくベッドの上で大胆な行動に出た穂香だったが、そこから一転「家だと照れるなぁと思って。付き合う前から一緒に住んでるせいかな、生活感が生々しいというか、切り替えが……」と急にそんなムードではなくなってしまう。

波瑠

 互いにある意味思い込みが激しく、配慮のベクトルがズレてしまいがちな穂香と山本。この穂香が漏らした一言が山本にとっては“家では照れる問題”として認識され、家の外でしかそんなムードには持ち込んではいけないと、また謎のルールが一つ増えてしまう。

高杉真宙

 そんな最中、新商品企画の社内コンペが開催されることになり、優勝者には沖縄旅行の豪華プレゼントが付く。元々商品企画部志望だった山本はこのコンペに向けて張り切り、穂香は「そんな彼をサポートしたい」と慣れない家事を頑張ってみるも自分は役に立てないと落ち込む。そこにまた何とも言えぬタイミングで、自分とは正反対の山本の元カノが登場。動画サイトで人気の料理研究家・宮下紗織(北香那)と遭遇し、彼女と自分を比較してしまう。いくつになったって、相手が何歳だって誰かを好きになるとやってしまいがちな心配や杞憂を一通りなぞって見せてくれる穂香と山本が愛おしい。

 「いわゆる彼女として力になれないなら、旦那として何ができるか考えたら?」という親友・君子(ヒコロヒー)の一言で、穂香は紗織に連絡をとり、レシピ案に煮詰まった時にどうすればアイデアが湧くかヒアリングする。穂香が自分の中で元カノエピソードと現在の山本を結びつけてしまう瞬間はやけにリアルだが、波瑠が演じると全く悪気がなく、そんな心の機微も安心して見守っていられる。

ヒコロヒー

 穂香は自分と山本の関係を“お世話担当”と“迷惑担当”と自虐的に話す。付き合う前から一緒に生活している2人ながら、いやそんな2人だからこそ、常に自分が相手に何ができるかを考え過ぎてしまう癖がついているとも言える。そこまで相手ファーストに考えられるのはすごいことではあるが、時と場合によって役割を意識しすぎず、もっとフレキシブルに流動的に対応できた方がより“2人らしい”関係性を模索できそうだ。

 穂香と山本は世間一般でいうところの男女の役割が逆転しているものの、それでも逆転した役割を常に意識し、“与える側”、“与えられる側”のように矢印の向きを意識し続ける。相手にとって役に立たなければと、いつだって“おあいこ”でないと納得できないと思いすぎてしまうのは、結局従来の性差による役割分担同様にどこか不自由だ。

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