『秀吉のスマホ』も現代との親和性が高過ぎる! 『◯◯のスマホ』シリーズを貫く無常観

『◯◯のスマホ』シリーズを貫く無常観

秀吉のスマホ

 スマホシリーズの魅力は、笑って泣けるところでもあって、さんざん笑ったあとに、しんみりする。それは各シリーズ、ほぼ同じパターンなのだが、飽きない。むしろ、そこがいい。栄枯盛衰。 人はみな死ぬ。秀吉だって上り詰めたらあとは黄昏が待っているのだ。第6話では、弟・秀長が亡くなり、嫡男・鶴松も……と不幸が続きはじめる。心療内科・天海先生(声はスマホシリーズ常連の山田孝之)が「西の方角が吉」と助言。西は日が沈む方角。「日も沈んでは登り、登っては沈む。人生と一緒です」というセリフは山田の素敵な声で深く染みてくる。常套句ではあるが、真理である。登ってもいつかはまた沈む。人間には、二度と登ってくることのない死が等しく待っている。どんなに調子に乗っても、いつか来る終わりのときーーその無常観がスマホシリーズを、ただの短いコントドラマに終わらせない、ピリッと辛いSFドラマにしている。どんなに所有していても死んだらなにひとつ持っていけないのである。第6話のラスト、秀吉がみつめるスマホの画面は家族の笑顔だった。

秀吉のスマホ

 さて、今回の『秀吉のスマホ』は、現在放送中の大河ドラマ『どうする家康』の今後、本能寺の変以降の予習になりそうだ。清州会議、市、茶々、なか、あさひ、歴史劇好きには常識的なことではあるが、知識のない人も『秀吉のスマホ』を観ておくと、流れがなんとなくわかるとおもう。

 『どうする家康』では服部半蔵を演じている山田は、『光秀のスマホ』『信長のスマホ』では光秀役だった。『秀吉のスマホ』では、天海となると、『麒麟がくる』ではやらなかった光秀=天海説をやるということだろうか。SF時代劇だからこそありな気はする。このあと、もし『家康のスマホ』があったら、そこでも演じるのは光秀だろうか。山田孝之による『半蔵のスマホ』も観たいのだが……。

■放送情報
『秀吉のスマホ』
NHK総合にて放送
第1話~第4話:5月29日(月)~6月1日(木)23:45〜放送
第5話~第8話:6月5日(月)~6月8日(木)23:45〜放送
脚本:竹村武司
出演:和田正人、大塚寧々、濱田マリ、貴島明日香ほか
写真提供=NHK

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