『スキップとローファー』が視聴者の心を掴む理由　対照的なみつみとミカに思いを寄せて

　そんなミカだが、とあるきっかけでみつみと親しくなる。第5話でみつみは、クラスマッチで出場するバレーの自主練のため、バレー経験者であるミカにコーチを依頼する。ミカは「何で私がこんなこと……」と不満を持っていたが、コーチがきっかけで志摩と話す機会が増えたことにメリットを感じてみつみを指導していた。

　ある日いつものように練習のため体育館に行くと、1年生が使う日にもかかわらず、3年生の男子2人が理不尽に占拠していた。みつみは勇気を出して2人を注意するが、全く相手にされない。先輩の福田が注意してくれたおかげで2人の男子は撤収したが、ミカは2人の名前（白井・柴本）を覚え、理不尽な扱いを受けたことに心の中で激しく憤っていた。

　そんな中、みつみは「あの福田さんって先輩はかっこよかったよね！」と、注意してくれた先輩のことを話題にあげる。みつみは靴に書かれていた名前から、先輩の名前を覚えていたのだ。このことでミカは、みつみと自分の違いを痛感する。ミカが嫌な先輩2人の名前を覚えている間に、みつみは親切にしてくれた先輩の名前をひとつ覚えていた。

　つまり、ミカは相手の悪いところを見て人を判断するが、みつみは相手の良いところを見て人を判断しているのだ。そもそもみつみが自分に強く当たることも多いミカにコーチを依頼したのは「嘘をつかないから忌憚ない意見をもらえる」と思ったからだった。

「ものを教えるってね、問題に答えるより難しいんだって。実際、分かりやすかったし。凄く練習して上手になったんだなって分かるよ」

　みつみにこう言われたミカの脳裏には、コンプレックスを克服するためダイエットやメイクといった努力を重ねた過去の自分の姿が浮かんでいた。この出来事をきっかけにミカは少しずつ心を許し、世間知らずなみつみの世話を焼くようになる。

　「打算的で人の悪いところに目がいく」ミカと、「純粋でまっすぐで人の良いところを見ている」みつみ。魅力的に映り、周囲に愛されるのはみつみの方だ。誰かといる状況を常に楽しんでいる、そんな純粋さは人の心をつかむのだろう。しかし多くの人は、大なり小なりミカに近い考え方を持っているのではないか。

　みつみがあまりにも人を疑わないため、演劇部の兼近先輩から「チョロすぎて心配だな、この子」と思われるシーンがあった。筆者も最初は「確かに」と思ったが、直後に「本当にそうか？」と疑問を感じた。「間違っているのは自分の方で、もっとみつみのように人を疑わず信用すべきではないか？」。みつみの純粋な言動は、視聴者にも影響を及ぼすものがあるように思う。

　みつみの純粋さは、多くの人が大人になるにつれて失っていくものだ。それを持ち続けているみつみの姿は、多くの視聴者に眩しく魅力的に映る。この先みつみはどのように人と関わり、何をもたらしていくのか。

■配信情報
『スキップとローファー』
DMM TVにて、毎週火曜23:00より先行配信中 ※地上波放送同時
https://tv.dmm.com/vod/detail/?season=sa8ux8carc5cuqtjakvhf8d6b
原作：高松美咲『スキップとローファー』（講談社『月刊アフタヌーン』連載）
監督・シリーズ構成：出合小都美
副監督：阿部ゆり子
キャラクターデザイン・総作画監督：梅下麻奈未
総作画監督：井川麗奈
プロップ設定：樋口聡美
美術監督：E-カエサル
美術監修：東潤一
美術設定：藤井祐太
色彩設計：小針裕子
撮影監督：出水田和人
3D監督 ：市川元成
編集：髙橋歩
音響監督：山田陽
音楽制作：DMM music
音楽：若林タカツグ
アニメーション制作：P.A.WORKS
製作：「スキップとローファー」製作委員会
オープニングテーマ：須田景凪「メロウ」
エンディングテーマ：逢田梨香子「ハナウタとまわり道」
出演：岩倉美津未：黒沢ともよ、志摩聡介：江越彬紀、江頭ミカ：寺崎裕香、村重結月：内田真礼、久留米誠：潘めぐみ、ナオ：斎賀みつき、迎井司：田中光、山田健斗：村瀬歩、兼近鳴海：木村良平、高嶺十貴子：津田美波
©高松美咲・講談社／「スキップとローファー」製作委員会
アニメ公式サイト：https://skip-and-loafer.com/
公式Twitter：https://twitter.com/skip_and_loafer
公式Instagram：https://www.instagram.com/skip_and_loafer/
公式TikTok：https://www.tiktok.com/@skip_and_loafer