黒木華×寛一郎×池松壮亮が『せかいのおきく』で得たものは? 阪本順治監督の現場を語る

『せかいのおきく』特別座談会

 阪本順治監督最新作『せかいのおきく』が4月28日より公開された。本作の舞台は江戸時代末期。だからといって、徳川幕府将軍をはじめとした、いわゆる“偉人”が出てくる物語ではない。登場人物は下肥買いと貧乏長屋に住む人々という、歴史に名前を刻まれていないキャラクターたちだ。

 古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事に就く中次(寛一郎)と矢亮(池松壮亮)、武家育ちでありながら質素な生活をおくるおきく(黒木華)。3人はともに青春を駆け抜ける中でせかいの輝きに触れていく。阪本監督は本作のメインキャラクターである3人を、どんな思いを込めて、黒木華、寛一郎、池松壮亮に託したのか。日本映画・ドラマ界を牽引する3人と阪本監督に、本作について振り返ってもらった。【インタビューの最後にはチェキプレゼントあり】

阪本順治監督「3人とも想像以上のものをみせてくれた」

ーー黒木さん、池松さんは阪本組に初参加、寛一郎さんもメインキャストとして本格的に参加するのは本作が初となります(『一度も撃ってません』に出演)。阪本監督、まず、この3名をキャスティングした理由からお話いただけますか。

阪本順治(以下、阪本):僕の映画でいつも美術監督を務めている原田満生が「環境」についての映画を作りたいという思いから本作はスタートしました。すぐに資金が集まるわけではないので、まずは短編を作ろうと。その中で原田が若い俳優たちと僕がどう向き合うのかを見てみたいと言って、短編1作目では、黒木さんと寛一郎くんの名前が挙がりました。そして2作目では池松くんと。キャスティングをしてからシナリオも書いたので、ほぼあて書きなんです。3人ともたくさんの作品に出演しているので、正直びびってましたよ。「阪本は本数だけ多いけど、どんなもんじゃい」って感じでくるんじゃないかなと(笑)。

池松壮亮(以下、池松):そんなこと思うわけがないじゃないですか……黒木さんはもしかするとそう思っていたかもしれないですけど(笑)。

黒木華(以下、黒木):そんなこと言わないでくださいよ(笑)。阪本監督は同郷で同じ関西人なので、ノリといいますか、いろいろと許してくれる方で。撮影現場では皆さんと仲良くなった方が居心地がいいので、距離を縮めさせていただいたかもしれませんが、決して、「どんなもんじゃい」とは思っていなかったですよ(笑)。

一同:(笑)。

ーー池松さんの出演作を振り返ると、阪本監督に近い方々との仕事は非常に多かっただけに、本作が阪本監督作品初参加というのが驚きでした。

池松:そうなんです。今回ようやくご縁を頂きました。阪本組に近しい方々は周りに沢山いたので、阪本さんの話はよく聞いていました。自分がいまさら新参者として入っていいのだろうかという思いと、やっと阪本さんとご一緒できるという思いと。いまこのタイミングでこの作品で出会えたことをとても幸せだなと感じています。

ーーおふたりに対して、寛一郎さんは『一度も撃ってません』で阪本組に参加しているので、距離も近いのかなと感じましたが……。

寛一郎:あ、近くないですよ。

一同:(笑)。

寛一郎:(阪本監督に)近いですかね?(笑)。プライベートな面では近いかもしれないのですが、仕事面では……。『一度も撃ってません』のときは緊張でガッチガチで、現場では一言も誰ともしゃべらなかったんですよ。なので、本作の基となった短編の撮影のときに、初めて阪本監督と会話ができて、作品をやっと作れたなという感覚です。

ーー3人をあて書きしたキャラクターとのことでしたが、実際に芝居を見て、演出をされていく中で当初のイメージから変化していった部分はありましたか?

阪本:あて書きとはいえ、僕の思いどおりに動いてほしいとかはまったくなくて、キャスティングした時点でキャラクターについてのバトンはもう渡しているところがあります。ただ、僕はカット割をものすごく重視する人間で。ここは引いて、ここはアップとか。演技に関しては自由にしてくださいと言いつつ、編集を踏まえた画作りを考えていたので、その点では3人ともやりづらい部分もあったかもしれない。ただ、3人ともこちらが想像する以上のものを常に見せてくれて、それはさすがだなと感じましたね。

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