『帰れない山』監督コンビが語る“戻れない過去” 「時間は執拗に前に進んでしまうもの」

『帰れない山』監督が語る“戻れない過去”

「時間は執拗に前に進んでしまうもの」

――ブルーノ役アレッサンドロ・ボルギの一挙手一投足が、本当に長年山で暮らしている人のようで驚きました。どのような演出をされたのでしょうか?

ヒュルーニンゲン:アレッサンドロは賢く、飲み込みが早い人なので、僕たちが演出をしなくても自分自身で役柄を見つけだしていました。最初にブルーノ役の俳優を探しているとき、すでに彼の名前は挙がっていたのですが、僕たちはあまりしっくりきていませんでした。ところが、彼がスケジュールの合間にやってきて、その場でキャラクターに入り込んでみせてくれたんです。その瞬間、生を享けたように、ブルーノという役が生き生きと輝き出すのを感じました。アレッサンドロは、乳搾りのやり方をすぐに覚えてみせたり、山岳地方のアクセントを身につけて喋ってみせたり、とても直感的な人なのです。そんな彼と仕事ができたのは、我々にとっては夢のようでした。

――本作は、時間の流れ方がとても特徴的な作品だと思います。時間の描き方について意識されたところがあれば教えてください。

ファンデルメールシュ:時間というのは、どんどん進んでいくものです。フェリックスは、これまで手がけた作品の中で、何度も時間を巻き戻す演出をしてきましたが、この映画の中ではそうしないように決めていました。本作では、時間は執拗に前に進んでしまうものだということを強調しています。少年期から青年期、青年期から大人になる場面で、何度か時間が飛ぶ演出がありますが、それは故郷に帰らないまま気づいたら10年が過ぎてしまったり、自分の父親がいつの間にか年老いて亡くなってしまったり、私たちがどれだけ何かを気にかけず、見ないようにしている内に時間が進んでしまったかということを表わしています。そういった時間の残酷さ、進み方というものを私たちなりに表現しました。

■公開情報
『帰れない山』
全国公開中
監督・脚本:フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン&シャルロッテ・ファンデルメールシュ
原作:パオロ・コニェッティ『帰れない山』(訳:関口英子/新潮クレスト・ブックス)
撮影:ルーベン・インペンス
出演:ルカ・マリネッリ、アレッサンドロ・ボルギ、フィリッポ・ティーミ、エレナ・リエッティ
配給:セテラ・インターナショナル
宣伝協力:ポイント・セット
2022年/イタリア・ベルギー・フランス/イタリア語/1.33:1/5.1ch/147分/日本語字幕:関口英子
©2022 WILDSIDE S.R.L. – RUFUS BV – MENUETTO BV – PYRAMIDE PRODUCTIONS SAS – VISION DISTRIBUTION S.P.A.
公式サイト:www.cetera.co.jp/theeightmountains/

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