映画『名探偵コナン』とヴィン・ディーゼル映画に共通点? ハリウッド級アクションを堪能
映画館で劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影』を観た。なぜならつい最近『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』(2022年)を観たから。幼少期のころはよく観ていた劇場版『名探偵コナン』も、思春期の突入とともに「子供向けの映画の映画だし、なんか中学生にもなって観るの恥ずかしいな……」というどうしようもないレッテル貼りで観なくなってしまった。そして大人になって改めて観る劇場版『名探偵コナン』、「めちゃくちゃ面白いじゃん! 当たり前だバカ」。というわけで、本記事では『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の驚きと魅力をご紹介。
そもそも自分が改めて劇場版『名探偵コナン』の魅力を知ったのは『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、そして『名探偵コナン 紺青の拳』(2019年)を続けて観たのがきっかけだ。前者は渋谷を舞台にしたスリリングなサスペンスといくらなんでもハチャメチャすぎるアクション。そして後者はシンガポールが誇るマリーナベイ・サンズに対する冒涜的な破壊。この2作を観て「なんだこれ?」と思った。「なんて面白いんだろう」とも。そしてこの驚きと興奮は素晴らしいことに『名探偵コナン 黒鉄の魚影』でも味わえる。
偉大なる漫画原作者、小池一夫先生はかつて「漫画=キャラクターである」と語ったが、まさに『名探偵コナン』はその代表格のような漫画なのかもしれない。「魅力的なキャラクター」とは実によくある誉め言葉だが、『名探偵コナン』を観ると改めてその巧みさに舌を巻く。これは一例に過ぎないし、改めて言うことではないが「主人公には弱点をつける」という小池一夫先生の理論に対する江戸川コナンというキャラクターは完璧と言っても差支えがない。「見た目は子供、頭脳は大人」と一言で説明できる上に、その弱点によって物語が無限に広がっていく。実際、『黒鉄の魚影』ではその部分が浮き彫りになるシーンがいくつかあるし、その一方で『ハロウィンの花嫁』ではエモーショナルなシーンで利点として作用している。
そして驚くべきは『名探偵コナン』にはそんな、別の媒体なら余裕で作品の顔になるような魅力的なキャラクターが数多く存在する。本当に従来のコナンファンには言うまでもないことなのだけど、改めて子供のころ親しんだ『名探偵コナン』に向き合うと、とんでもない作品だなと思い知る。本当に良いキャラクターが多い。そして本作『黒鉄の魚影』は、そんな魅力的なキャラクターのなかでも屈指の人気を誇る灰原哀(CV:林原めぐみ)をフィーチャーした内容となっている。
現在『黒鉄の魚影』がシリーズ最大級の興行収入が見込めるヒットを記録しているが、これは灰原哀というキャラクターが持つ魅力と、人気キャラクターが数多く出演するオールスター映画な側面によるところが大きい。それと同時に、このヒットはただ単に「灰原哀がフィーチャーされたオールスター映画だから」だけではないと思う。いくら『名探偵コナン』のキャラクターの魅力が凄いからといって人気キャラクターだけを適当に配置して面白くなるわけがない。実際、コナン映画には数多の人気キャラクターを扱うことに振り回された結果、脚本が破綻してしまった作品も少なからずあるように思う。
『黒鉄の魚影』で凄いと思ったのは、安室徹(CV:古谷徹)や赤井秀一(CV:池田秀一)をはじめとした人気キャラクターを数多く配置しながら、(そんな彼らを活躍させつつ)それに振り回されることなくきっちりスパイスリラーや殺人ミステリとして面白くなっているところだ。それでいて、灰原哀の物語として原作に影響与えかねないようなかなり踏み込んだ内容となっている。これには本当に驚いた。「そこまでやるのか!」と。『黒鉄の魚影』はキャラクター人気にあやかった作品ではなく灰原哀に正面から向き合って踏み込んだ作品であり、またオールスター映画として多数の人気キャラクターを丁寧かつ効果的に扱いつつ一本芯の通った作品である。だからこそ『黒鉄の魚影』は今現在も数多くの観客が劇場に詰めかけているのだと思う。
そしてそんな大傑作において忘れてはいけないのが(というか自分が大好きなのが)、劇場版『名探偵コナン』お馴染みのアクションシーン。筆者はアクション映画が大好き。それも人命の軽視および公共物の破損があるようなやつが特に大好き。そして劇場版『名探偵コナン』は(特に近年の作品は)公共物の破損において他の追随を許さない。先述もしたマリーナベイ・サンズに対する冒涜的な破壊はもちろん、リニアモーターカーを空高く打ち上げた果てにオリンピックめいた競技場に突っ込ませたりしている。なんなら第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』(1997年)の時点でビルをまるまるひとつ爆破している。