『らんまん』神木隆之介の“上京物語”は過去最大級? 朝ドラの主人公が東京で得るもの

『らんまん』万太郎の上京物語は過去最大級?

 ここ数年だけに絞ってみても、やはり多くの主人公が東京へと向かった。『半分、青い。』(2018年度前期)の楡野鈴愛(永野芽郁)はマンガ家を目指し、『なつぞら』(2019年度前期)の奥原なつ(広瀬すず)はアニメーターを目指して、『エール』(2020年度前期)の古山裕一(窪田正孝)は作曲家を目指して、『おかえりモネ』(2021年度前期)の永浦百音(清原果耶)は気象予報士になるべく、そして『ちむどんどん』(2022年度前期)の比嘉暢子(黒島結菜)は料理人になるために、それぞれが東京へと向かったのだ。

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 そして彼ら彼女らは、目の前の問題をいくつも乗り越え、ときにつまづきながら、夢に少しずつ近づいていった。その果てに待っているのは、“新しい自分”である。故郷を離れて新しい環境で生活をする中では、さまざまな取捨選択をしていかなければならない。何かを選び取るたび、代わりに何かを捨てなければならない。そうして私たちは少しずつ変わっていくのだ。

 造り酒屋である「峰屋」に生まれた万太郎には、宿命がある。それは家業を継ぐということだ。時代が時代である。いま以上に女性には自由や選択権がなく、男性には生まれる前から用意されたレールの上を走っていかなければならない使命があった。それに抗っていくのは容易なことではないだろう。

 万太郎の祖母であるタキ(松坂慶子)は「すべては得られない」と口にした。「何かを選ぶことは何かを捨てること」だとも。東京を求めるからには、故郷を離れなければならない。これが彼の人生における大きな取捨選択の一つ目だ。明治という時代の転換期ということもあり、ここ数年の朝ドラで描かれてきた“上京物語”の中でももっとも壮大なものである。

 ここ数話、胸躍る展開が続いていた。なぜならそれは、旅立ちの前だからだ。自由民権運動家である早川逸馬(宮野真守)やジョン万次郎こと中濱万次郎(宇崎竜童)との出会い。彼らを前にした万太郎の表情を見ていると、こちらも何か力のようなものが湧き上がってくる。そしてそんな出会いが、これからいくつも万太郎を待ち受けているのだろう。お茶の間で正座して、ともに“上京物語”の始まりを楽しみたいところだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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