『シン・仮面ライダー』には“子ども成分”が足りない? “特撮ファン”宮下兼史鷹が分析

宮下兼史鷹が語る、『シン・仮面ライダー』

『シン・仮面ライダー』のベルトはシンプルでカッコいい

映画『シン・仮面ライダー』予告編

――おもちゃも好きなことで知られる宮下さんですが、その観点から振り返る『仮面ライダー』の思い出もお聞かせください。

宮下:やはり『仮面ライダー』といえばベルト、ベルトといえばおもちゃですよね。僕は現行品で出ているベルトはほぼ全て持っていて、中には気に入って遊ぶ用、観賞用、保存用の3つ買ったものもあります。そして、今回の『シン・仮面ライダー』のベルトがめちゃくちゃカッコいいんですよ。初代のベルトをリスペクトしつつ、しっかりと現代風でカッコいいものになっている。今、テレビ朝日で放送されている『仮面ライダー』シリーズのベルトって、いろんなギミックがあるんですよ。ここを押して、あそこを押して、こっちを引っ張って変身する……みたいな。しかも、ストーリーが進むにつれて新しいサポートアイテムが出るので、それをどんどんベルトに装着して楽しめるようになっている。それに比べて、昔の『仮面ライダー』のベルトは、ベルトが1つあれば、もうそこから何の変化もいらなかった。僕はそこにロマンがあるなと思っているんです。昔のベルトのおもちゃは、ボタンを押すと中のモーターが回って音が鳴るだけのシンプルな構造でした。僕の好きな『仮面ライダーBLACK』(TBS系)は、おもちゃのベルトを着けて、テレビの前で本編を観ていると、仮面ライダーBLACKが変身するときに、テレビが発する独自の光に反応して、自分の装着したベルトも光る仕組みになっていました。そういうふうに、1つのベルトに趣向を凝らしてどんどん進化していくのが良さなんです。

――え、連動してベルトが動くんですか!? すごいですね。

宮下:そうなんですよ! そんな中で、実際に『シン・仮面ライダー』のベルトも購入して遊びましたが、これはすごくシンプル。ボタンもひとつだし、音も3種類しかない。ただ、モーターの回転する音が、特撮ファンからするとたまりませんでした。昔のライダーベルトって、モーターが「ウーン」って回る音がして、光って、みたいなのがあの頃の憧れだったんです。それを今回のベルトにもちゃんと落とし込んで出しているのは、すごく嬉しかったですし、これくらいシンプルなベルトも今後は出してほしいなと思いました。変にギミックをたくさん入れるより、あの頃子どもだった人たちが憧れていたアイテムを、あの頃と同じような形で入手できる、というのが僕の考える理想なので。

――これまで『仮面ライダー』を通ってこなかった人が『シン・仮面ライダー』をきっかけに興味を持った際、どの作品から観始めるのがいいと思いますか?

宮下:僕もやはり『仮面ライダー』好きとして、「何から観るべき?」ってものすごく聞かれるんですよ。だいたいは自分が好きな作品や観て面白かった作品を列挙していきますが、奥さんと付き合う前にデートしたとき、初めてそうじゃないおすすめの仕方をしたんです。奥さんはそもそも特撮好きだったのもあって、歴代の仮面ライダーを全部見せて「なんかもうビジュアルで好きなライダー観たら?」って言ったんです。それで奥さんが選んだのが『仮面ライダーアマゾン』でした。そこで『アマゾン』にハマって、そこから彼女は『仮面ライダー』シリーズを観るようになったので、もしかしたら「ストーリーがこうだから」とか、そういうオススメの仕方ってもしかしたら違うのかもって最近思ったんです。見た目で「これだったら推せる」って思ったライダーの作品を観るのが、もしかしたら一番理にかなっているのかなって。アイドルと同じで、その入り方が一番、“自分で見つけた感”があるじゃないですか。やはり趣味って強制されたものではないし、わかりきったものでもなくて、自分で見つけて「こうなんだ、ああなんだ」って時期が一番面白いと思うんですよ。もちろん僕も「このライダーカッコいいから」とか、「この作品を最初に観てくれ」とか語りたいですよ。でも、まずは見た目を見て「いいな」って思ったライダーの作品を観てほしい。それが面白かったら、僕に話しかけてきてください。そしたら僕、「この後はこれを見たほうがいい、あれを見たほうがいい、こういうストーリーだから」って紹介できるので。そこからなんじゃないかなって思います。

――シリーズが長ければ長いほど登場キャラクターや作品が多いので、新しく入りづらいと感じがちですが、ファンの方にそう言ってもらえると肩の力を抜いて自由に作品を楽しめそうです。

宮下:そうですね。『シン・仮面ライダー』も、「初心者には難しい」と僕はずっと言っていますが、それはやはり庵野監督の愛、言い方を悪くすると、独りよがりなマニアックさが出ているからこそなんですよね。ただ、これを実現させたスタッフさん、そして何より役者さんの演技がみなさん本当に素晴らしくて、池松さんも多分大変な撮影だったと思いますし、ヒロインを演じた浜辺さんが、すごく今までにない浜辺さんというか……僕も彼女の出演作をそこまで多く追っているわけではありませんが、「こんな姿がこの方から見られるんだ」「こんなセリフがこの方から聞けるんだ」と新鮮な驚きがありました。だから、先ほど“推し”の話をしましたが、『仮面ライダー』をよく知らなくても、俳優さんのファンの方など、一つでもこの作品の中に興味があるものがあれば映画を観てほしいなと思います。

■公開情報
『シン・仮面ライダー』
全国公開中
出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、竹野内豊、斎藤工、大森南朋、長澤まさみ、西野七瀬、松坂桃李、森山直太朗、塚本晋也、手塚とおる、松尾スズキほか
原作:石ノ森章太郎
脚本・監督:庵野秀明
配給:東映
©石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
公式サイト:https://shin-kamen-rider.jp
公式Twitter:https://twitter.com/Shin_KR

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