芳根京子、『それパク』でさらに役幅が広がる? 挑戦することで獲得した“大人な魅力”
作品ごとに魅力を増し、大人の顔を見せるようになっている芳根京子。小動物のような愛くるしいビジュアルで演技も上手い20代の俳優のひとりだ。しかし、ただかわいらしいだけでなく、彼女はきっととてもチャレンジングな性格なのだろう。
彼女が演じてきた役柄は、同世代の女優の中でもかなりバリエーションに富んでいる。過去の強いトラウマや闇を抱えていたり、「明るい」などと一言で説明されるようなシンプルな性格ではなく、複雑なキャラクターが多い。そういう役を意識的に選んでいると感じられるし、筆者としてはそういう役柄を演じている時の彼女の方が、より迫力が増していて魅力的だと感じる。
例えば、土屋太鳳とW主演を務めた『累-かさね-』(2018年)で演じたのは、右頬に大きな傷跡を持ち、それをコンプレックスに抱きながらも俳優を目指す淵累。ある方法で人の顔を盗むという禁じ手を使いながら、俳優としてのし上がっていくという役だったが、その悲しさや暗いパワーを全力で表現していた。
1人2役というよりも、顔が入れ替わった後の土屋太鳳の役を演じるという、2人で1役というような難しさを(土屋太鳳も同様だが)、表情や喋り方でしっかり演じ分けていた。クライマックスとなる土屋太鳳との屋上でのバトルシーンの後は、「初めて声が枯れていた」とメイキング映像で語っている。
父親を殺害した女子大生・聖山環菜を演じた、2021年の映画『ファーストラヴ』では、何を考えているのか本心を明かさず、インタビューに来た臨床心理士の真壁由紀(北川景子)を翻弄し、幼い頃の異常な体験を抱えたまま生きてきたがゆえの混乱や怒りを見せた。本人が「過去最も役を引きずっていた」と語るくらい、環菜というキャラクターに浸食されたという。(※1)
もうひとつ、2021公開の映画『Arc アーク』の主人公リナも印象深い。世界初の不老不死の体を選び手に入れる女性役で、シーンごとに年齢が変わるという難しい役柄だが、丁寧に演じきっている。物語の後半では、小林薫と風吹ジュンという大先輩ふたりより、役の上ではさらに先輩という難しさとも対峙し、見応えのあるシーンを作り上げた。リナはトラウマを抱えた暗いキャラクターというわけではないが、産んだばかりの息子を見捨てたという過去を持っている。