山下美月、『舞いあがれ!』で証明した技量の高さ 西野七瀬を思わせる演技力と俳優の道

『舞いあがれ!』山下美月が技量の高さを証明

 だが、『舞いあがれ!』では舞の幼なじみであり、看護師という一般的な役に過ぎない。それは山下のこれまでの積み重ねてきたイメージとは程遠いもの。だからこそ、久留美という役柄は山下にとって正念場であるとともに、これを乗り越えられたのならば、それは大きな意味を持っているものだ。そもそも強烈な個性を持った役柄を演じることよりも、視聴者が共感できる素朴な役柄を演じるほうがより難しい。強烈な役というのはそれだけでキャラが成立してしまうが、そうでない場合には特に役者本人の技量が試される場合が多いからだ。

 山下はそんな高いハードルを乗り越えて、久留美という“一般人”に寄り添った役で視聴者の多くの共感を呼んだ。公式サイトのインタビューでこう語っている。

「最初に監督から『舞ちゃんとは逆のタイプの女の子にしたい』と聞いたので、声も低くして話すテンポを速くして、ちゃきちゃき感みたいなものを意識しています」(※2)

 女性らしい強さを持ち合わせながらどこかのんびりとした印象のある舞に対して、久留美は現実的で関西人らしく言いたいことはキッパリと言う性格。その対照的なキャラクターが映し出すのは親近感。舞が大きな夢を掲げていろんなことに挑戦していく中で、久留美は堅実に看護師の道を歩む姿を見せているからこそ、朝ドラとして絶妙なバランス感を生んでいたのだと思う。

 そしてそのバランス感に欠かせないのが堅忍質直な佇まいと関西人のような親しみやすさだ。映画『日日是好日』や『着飾る恋には理由があって』(TBS系)でも感じたことだが、山下は何気ないシーンでの表情や仕草といった細かい部分の表現が本当に上手い。この点において、山下は元乃木坂46の西野七瀬に近いものがある。もちろん、山下のパブリックイメージにあった役もいい。だが、俳優としての真骨頂は等身大の役柄でこそ発揮されるといえる。

 一度は婚約が破断した久留美だが、ついに悠人(横山裕)と結ばれた。第128話では悠人がついに久留美にプロポーズ。2人で笑い合うシーンはこれまでの2人が歩んできた過程を知っているからこそ微笑ましく思えた。

 『舞いあがれ!』は山下の演技力の技量の高さが広範の層に訴求するものであった。4月からは『弁護士ソドム』(テレビ東京系)への出演も決定しており、朝ドラへの出演を機に俳優として本格的な注目を集めることになるだろう。乃木坂46は世代交代という大きな岐路を迎えただけに、山下の個人活動は大きな意味を持つはずだ。

参考

※1. https://realsound.jp/movie/2021/10/post-883276.html
※2. https://www.nhk.or.jp/maiagare/topics/topic10.html

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
2022年10月3日(月)から 2023年4月1日(土)まで
総合:8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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