『大病院占拠』駿河の黒幕説は正しいのか? 残された謎と“唯一の勝者”を振り返る

『大病院占拠』残された謎と“唯一の勝者”

 櫻井翔主演の日本テレビ系土曜ドラマ『大病院占拠』が最終回を迎えた。放送のたびに考察が賑わい、最終回では全ての謎が明かされて一件落着となるかと思われていた。しかし実際には、ラストの匂わせや、公式サイトのあらすじにも「鬼退治を果たした武蔵(櫻井翔)に、家族3人の穏かな暮らしが戻る。だがその裏で……」という一文が付け加えられ、視聴者にさらなる謎を残した。そこで、最終回を振り返り、残された謎について考察してみたい。

最終回で明かされた真実

 最終回は、主に2つの大きな謎に焦点が絞られていた。1つは鬼たちが追うP2計画の元凶のこと、もう1つは大和耕一(菊池風磨)が青鬼になったガソリンスタンド事件の真相だ。

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 まずP2事件の発端は、神奈川県警刑事部捜査一課特殊班管理官・和泉(ソニン)の夫が、3年前の集団感染の際に、警備部特殊部隊管理官・丹波管理官(平山浩行)の代わりに知事(筒井真理子)の警護で船に乗り、ウイルスに感染して死亡したことだ。この時に和泉が知事にワクチン開発を進言したことから、P2計画が始まった。つまり発案者は和泉であり、感染に関する様々な隠蔽工作も知っていて、鬼たちの占拠の目的も理解していた。しかし鬼たちにとっては、愛する者を失った元凶が和泉なのだ。

 そして百鬼夜行のリーダー・青鬼こと耕一の正体は、アプリ開発会社「IZUMOビジョン」のCEO。そして赤鬼/美作孝(忍成修吾)と黒鬼/伊予みさき(ベッキー)は共同経営者で、同じ里親のもとで育った。そしてウイルスに感染し冷凍保存されていた山城琴音(上西星来)も同じ里親で、3人にとっては妹のような存在だった。彼らの里親にあたるのが、ガソリンスタンド立てこもり事件の犯人で、武蔵に撃たれた尾張耕太郎(青木一平)。尾張は、ホテルオシマの元支配人・薩摩直美から山城琴音の死の真相を聞き出そうと身柄を拘束し、籠城した。これがガソリンスタンド事件の真相だ。

 しかし、理由を聞かずに武蔵が尾張を殺したこと、そして立てこもり事件をスマホで撮影していた因幡(明日海りお)が動画をアップすることで再生数を稼ぎ、和泉も犯人の動機を公表されたくないので事件の真相を隠蔽。結果的に武蔵が正義、尾張が単なる犯罪者として世間に認知されてしまったことに恨みを持ったことが、耕一を青鬼に変えた元凶だった。そして尾張が残した手帳を頼りに、P2計画の真相に迫ることになった。

 この真実が世間に公となり、さらに鬼たちが素顔で愛する人への思いを訴えた動画を流したことで、耕一が国民に問うた「愛する人の命」を優先する自分の正義と、「1億2000万人の命」を優先する知事の正義、どちらを選ぶかの国民投票で「愛する人の命」が勝利し、鬼たちの目的は達成された。

耕一が用意していた最後の展開の意図は?

 クライマックスでは尾張と同じように耕一は裕子(比嘉愛未)にカッターを押し当て、武蔵に拳銃を向けさせるという、ガソリンスタンド事件を再現。このまま愛する妻を死なせるか、銃で耕一を殺すかの正義心を揺さぶる。この事件がきっかけで銃を持つと手が震えるようになった武蔵だが、そんなことはお構いなしなのが武蔵の面白いところ。ボイラーのダクトを撃ち、蒸気の中で裕子を救出。すると耕一はガソリンをまき、手帳に火をつけ自殺しようとするが、武蔵は「これがお前の復讐なのか、お前の正義なのか! ここでお前も死んで妹は喜ぶのかよ。俺はもう誰も死なせない。大和、お前は生きるんだ」と耕一を確保した。

 しかし、ここまで用意周到だった耕一が、こんな結末を迎えるのはあまりにも安易ではないだろう。鬼としての目的を達成したことで、あとは死に場所を探していたということかもしれないが、もしあの場で自殺したら、里子の家族である黒鬼と赤鬼を悲しませるだけで、これまで訴えてきたものが台無しになる。

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 耕一が武蔵を恨んでいたことは間違いない。だが、今回武蔵が娘や裕子という目の前の愛の為に命を張る姿を見て、どこか友情に近い信頼が生まれたようにも見えた。もちろん、病院の真相究明のために武蔵に動いてもらわないといけないので、加担する理由はある。ただ、見方を変えれば武蔵のトラウマもP2計画が元凶で、お前が悪いのではない、目を覚ませと叱咤激励しているようで、家族の絆を取り戻す手助けもしていたようにも見える。最後のバトルも、自分自身に決着をつけたいという思いと同時に、武蔵のトラウマを払拭させるための行動にも見える。さらにいえば、武蔵に耕一にとっての真実を聞いてもらいたかっただけなのかも知れない。

最後の「宛先不明」のメールが意味するものは?

 さて、事件は一件落着。娘・えみりから「パパはわたしのヒーロー」と絵を渡され、武蔵の平和な「嘘だろ」が聞けたところで物語が終了かと思われた。しかし最後に、誰もいない薄暗い部屋で一通のメールを受信し、「宛先不明」から「U4r0n05h0mendAre」というアドレスに向けて「ありがとうございました blue」というメッセージが。それを削除するモニターに映り込んでいた人物が、情報分析官・駿河(宮本茉由)。メガネを外し、微笑み、「駿河が鬼側の人間か? 真の黒幕か?」と匂わせドラマが終了する。

 公式サイトの最後の隠し動画でも、パソコンの前にメガネが置かれ、「father」と文字が出る。文字に関しては、これまでの文字を繋げた「The first person who got shot by Musashi was the blue ogre's foster father」という青鬼とガソリンスタンド事件の犯人の関係性を表したもので、駿河に対してのfatherという意味ではない。いや、駿河の父も尾張なのか?

 この「U4r0n05h0mendAre」の文字は「後ろの正面だれ」と読むことができる。これは今作の副タイトルである「This hospital is like a birdcage」という「籠の中の鳥」と結びつき、「かごめかごめ」という鬼が後ろにいる人物を当てるゲームに繋がる。つまり、後ろの正面=真の黒幕は駿河ではないかという話題で、SNSでの考察はもちきりだ。

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