『罠の戦争』権力の坂を転がり落ちる鷲津 杉野遥亮が体現した怒りと絶望
人はどこから道を踏み外すのだろう。『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)第10話では、永田町の空の下で政界の空中戦が描かれた。
鶴巻(岸部一徳)を幹事長のポストから引きずり下ろした直後、鷲津(草彅剛)は窮地に陥る。政治資金規正法違反を報じる週刊誌の記事と、何者かがばらまいた怪文書。見えない敵の包囲網がじりじりと鷲津を追い詰める。週刊誌の記事は犬飼(本田博太郎)の秘書だった虻川(田口浩正)が仕組んだものだが、怪文書の犯人は不明。相次ぐ紙の爆弾は内情を知る何者かの仕業で、鷲津を偽善者と非難し、破滅させると強い調子で訴える書面から、鷲津に強い恨みを抱く人物と思われた。
裏で鶴巻が手を回していると考えた鷲津は、総理大臣の竜崎(高橋克典)に鶴巻を失墜させると告げ、そんな鷲津に竜崎は近く空席になる副大臣のポストをちらつかせた。鶴巻の不正の証拠を探すうちに、鷲津は新空港建設にともなう利権を鶴巻が自らの懐に収めた疑惑を突き止める。税務調査を装って決定的な証拠を押さえた鷲津は、証拠の写真を持って竜崎の元へ向かった。
目の色を変えて鶴巻の不正を暴こうとする鷲津は、何かに取りつかれているようだ。「補佐官以上のポストも夢じゃない。そしたら、もっと大勢の人の力になれる」という言葉が空疎に響いた。疑惑の追及に血眼になる一方で、議員の本来の仕事がなおざりになった。後援会の会合や商工会の陳情を人任せにし、可南子(井川遥)の相談にも専門外と言って耳を傾けなくなった。
「私に力をいただけませんか」と鷲津は竜崎に持ちかける。事実を公表して鶴巻派を分裂させる代わりに、将来の大臣のポストを約束してほしいと要求した。だが、そこは竜崎が一枚上手だった。鶴巻の政界引退は青天の霹靂だった。竜崎に証拠を突き付けられた鶴巻は打つ手なしと悟り、身を引いた。結果的に鶴巻は名前を汚すことなく政界に影響力を保持し、立場が逆転した竜崎は鶴巻を使って党内を掌握できる。両者の利害は一致した。鷲津が目障りになった竜崎は厚生労働副大臣に鷹野(小澤征悦)を起用。鷲津には怪文書の犯人を見つけ出せとプレッシャーをかける。