『星降る夜に』希望を描く一番星のようなドラマに 一星の“おせっかい”が深夜の心を救う
なんてやさしいラストなんだろうか。物事には始まりと終わりがある。それは始まった命が、やがて終わっていくように。すごく自然なこと。このまま時が止まってくれたらいいのにと思う素敵な瞬間も、永遠に抜け出せない悲しみの渦の中にいる時間も、ゆっくりと時間は流れて、やがて変化していく。
その大きな流れの中で、手の届く距離に近づいた縁のある人たちとの出会いがある。もし苦しんでいる人がいれば駆けつけ、泣いている人がいれば背中をさすって抱きしめ、おいしいものがあればおすそ分けして一緒に笑顔になる。みんながそんなふうにやさしく労り合いながら生きていけたら……と、星に願いを祈りたくなるような夜だった。
ついに最終話を迎えたドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)では、それぞれの止まっていた時計が動き出すさまが描かれた。まずは10年間、亡き妻・彩子(安達祐実)とそのお腹の子との思い出が詰まった家を整理することができなかった深夜(ディーン・フジオカ)が、ついにその決意を固める。
「遺品整理のポラリス」全員で誠意を尽くして取り組む遺品整理。その様子を鈴(吉高由里子)もそばで見守る。生まれると信じてやまなかった子のために、深夜が組み立てたベビーベッド。学生時代からの友人である千明(水野美紀)と一緒に星空を覗いた望遠鏡……。その一つひとつに蘇ってくる景色があって、彩子の軽やかな笑い声が聞こえてくるようだ。
当然やってくると思っていた未来がこなかったことに、向き合わなければならない時間。覚悟をしていたとはいえ、様々な感情が込み上げてきたのか深夜の呼吸が乱れる。そんな彼の背中にそっと手を添えた鈴。これまで様々なピンチに駆けつけてくれた深夜のために、鈴ができることは何も言わずにそばにいることだった。
奇しくも息子につけようと思っていた名前を持つ一星(北村匠海)が主体となって片付けられていく家。そこで、第1話から描かれ続けてきた一星の“おせっかい”が光る。出産直前に彩子がサプライズで用意していた深夜へのプレゼントがあったのだ。深夜と彩子、そして生まれてくる子と3人分のおそろいのスニーカー。
「全処分」という依頼通りに作業していたら、そのまま深夜のもとには届かなかったかもしれない。でも、そのスニーカーを見てようやく深夜は涙を流すことができた。「おせっかい」と言われても一星がやめないのは、こういう届けられるべき思いがそこにあるから。人として大事にしたいものがあるから。
深夜が医者になったのは、復讐のためだった。その真意は、なぜ彩子とその子が死ななければならなかったのか、誰が悪かったのか、それを追求することが生きる糧になっていたこと。でも、その結果たどり着いたのは誰のせいでもなかったという、ある意味では救われない厳しい事実だった。