『舞いあがれ!』が突きつける介護と子育ての違い 祥子は五島を離れる決心ができるのか

『舞いあがれ!』急浮上したばんばの介護問題

  舞(福原遥)と貴司(赤楚衛二)の娘・歩の成長がすくすく描かれる中、今度は祥子(高畑淳子)の介護問題が急浮上した連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)。

 軽い脳梗塞で倒れてしまった祥子は、手足に麻痺が残ってしまう。入院先の先生からもう祥子は船に乗るのも難しいし、できるだけ1人で生活するのも避けた方がいいと告げられためぐみ(永作博美)。五島に1人母親を残しておく訳にもいかず、東大阪で一緒に暮らしたいと打ち明けためぐみに、貴司の父・勝(山口智充)は現実を突きつけ覚悟を問うた。それぞれに仕事があり、歩の子育てもある。“今の生活”の形をそっくりそのまま保ったまま、介護が必要な祥子を受け入れることは確かに難しいだろう。これまでの共同生活に新メンバーが加わるだけでも大変なのに、仕事と育児、さらには介護の両立となるとどこかに綻びが出るのは目に見えている。

 さらに勝が言った「介護」と「子育て」の違いは、筆者自身も学生時代に教育実習の一環で参加した介護施設での研修時、実際にそこで働く介護士の方から直接聞いた言葉と同じだった。「子育てはだんだん楽になっていくけど、介護はその逆」――子育ては日に日に人が成長する姿が見られるが、介護は昨日できたことが今日できなくなっていく姿を近くで見守らなければならない。めぐみの場合、社長ゆえ通常よりも時間の融通などがつきやすい側面も多少はあるかもしれないが、ただでさえ常に会社のために決断し大きな責任を一身に背負わなければならない社長業との並行は心身ともにかなり酷だろう。

 舞夫婦とめぐみは同居しており、貴司は家事・育児にも当たり前のように積極的で、さらに貴司の実家もすぐ近くにあり、あんなに協力的な義両親がいても尚難しいのだ。これら全てを持たない人も少なくない中、改めて人が人と一緒に暮らすことに付きまとう困難やそこで発生する避けては通れない問題が描かれる。

 また、いくら受け入れ体制が整っても、祥子本人が島を離れる決心ができるのだろうか。漁師だった夫が亡くなった後ずっと島に根付いて生活し、周囲の人と協力し合い居場所を獲得し、女手ひとつでめぐみを育て上げた祥子だ。五島は単なる住まい以上にそこで生きることやそこでの生活自体が自身のアイデンティティと切っても切り離せないものとなっているだろうし、ある意味プライドや意地の拠り所でもあるだろう。

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