北村匠海、及川光博、岡崎体育も ミュージシャンが人気俳優に至るまでの確立された道程
福山雅治を筆頭に、元々はミュージシャンだけれど俳優業も兼業している人の数はかなり多い。それも最近に始まったことではなく、泉谷しげる、石橋凌あたりの年代にも、元々ミュージシャンだということを忘れがちになるくらい俳優の顔が定着した人は意外と多い。若い年代の人たちは彼らがミュージシャンだということを知らなかったという人も多いだろう。
また最近では、歌手デビューと俳優デビューがほぼ同時期という人も増えている。
先に音楽活動を行っていたミュージシャンは、自分の表現したい世界をある程度作り上げ、イメージ、キャラクターが出来上がっていることが多いので、演技の1発目はそのイメージに近い役柄を与えられることが多い。また逆に、あえてすでにあるイメージと真逆のキャラクターを与えられたりすることもある
川上洋平に続き長岡亮介も ミュージシャンが俳優として起用される理由は“新鮮さ重視”?
坂元裕二脚本のドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)にペトロールズや東京事変などで活躍するミュージシャンの…
どちらにしても、初めはちょっと毛色の変わった、にぎやかし、客寄せパンダ的な役割で呼ばれる意味合いが大きいのだが、そこで強い印象を残す演技を見せることができれば、役者としてのオファーが増えていく。
また当然彼らは、特徴のある、人の耳に引っかかる声をしている場合が多く、その点は有利で印象に残りやすい。今回は、ここ最近で注目度の高いミュージシャン出身の俳優に注目したい。
北村匠海
現在『星降る夜に』(テレビ朝日系)で、吉高由里子だけでなく世の大人の女性たちもキュンキュンさせている北村匠海。
丸く大きな黒目がちの瞳と、いつも少し困っているような表情で少年のイメージが強いが、実は9歳の頃から子役として活動していたため、芸歴は長い。
ダンスロックバンドDISH//のリーダーとしても知られているが、実は2008年に『みんなのうた』(NHK総合)で「リスに恋した少年」を歌って歌手デビューを果たしている。演技も歌手活動もほぼ同じ年数のキャリアなのだ。
俳優としての北村匠海像が定着してきたのは、映画『君の膵臓をたべたい』(2017年)の主人公・“僕”役だろう。
クラスメイトの女子高校生・山内桜良(浜辺美波)が重い病気を抱えていることを知ってしまい、彼女の残り少ない日々を一緒に過ごす地味な男子の役を静かに誠実に演じきり、多くの人の涙腺を崩壊させた。映画は大ヒット、北村は第41回日本アカデミー賞新人賞を受賞した。
実はその前年の2016年には、TVドラマ『信長協奏曲』(フジテレビ系)、映画『ディストラクション・ベイビーズ』など、出演作が一挙に増えてきていた。
特に同年放送のドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)で演じた、吉岡里帆演じる教育実習生の彼氏・小暮静磨役は秀逸だった。おバカでストーカー気質のやきもち焼き彼氏(彼女の携帯をちょっとずつ盗み見て、文字の予測変換で内容を推測した)という強烈キャラで、松坂桃李、岡田将生、柳楽優弥の3人を含めた豪華なメンツの中でも埋もれてしまわず、躊躇なく笑えるキャラをまっとうした。
また『隣の家族は青く見える』(2018年/フジテレビ系)で演じたのは、眞島秀和演じる建築士の恋人・青木朔役。同性愛者だということを引け目に感じたりせず、一見軽いキャラに見えながらも、恋人のために地道に努力できる芯の強さを見せていくキャラクターに育っていったのは、北村匠海が丁寧に演じたからだろう。
もうひとつ、『にじいろカルテ』(2021年/テレビ朝日系)で演じた、マッシュルーム頭が特徴の看護師・蒼山太陽役も忘れがたい。普通で個性がないことに悩み、真面目過ぎるところがかわいくていじられてしまう太陽くんは、若者らしくて本当にかわいかった。
歌手としての活動も順調で、リーダーを務めるDISH//は結成12周年を迎える。声も顔もまだ少年のかたくなさのような匂いが感じられることもあるが、これから演じる役柄の幅ももっと広がっていくと思うので、どんな成長をしていくのか期待したい。