『悪の花』心震わすイ・ジュンギの神演技 愛する人のためについたウソは悪なのか?

『悪の花』心震わすイ・ジュンギの神演技

 14年間、愛してきた夫が連続殺人事件の容疑者だとしたらーー。あなたはそれを真実だと信じ、これまでの愛を全て否定するのだろうか。それとも全てを受け入れるのだろうか。

 Netflixで配信中の『悪の花』は、昨年の12月より配信開始してから、連日ランキングでTOP10入りを果たしている(※1月31日現在)。韓国では2020年にケーブルチャンネルtvNで放送され、完成度の高さにドラマ終了後も話題が止まなかった作品である。そして2021年に開催された第57回百想芸術大賞において、テレビ部門のドラマ作品賞、演出賞、脚本賞、最優秀演技賞(イ・ジュンギ)、助演賞(キム・ジフン)の5部門にノミネート。どこを取っても評価の高い秀作であることがわかる。日本で同日配信されていればより一層盛り上がりをみせたであろう点が悔やまれるが、だからこそ今からでも観てほしいドラマとして紹介したい。

 『空港に行く道』(2016年)、『マザー〜無性の愛〜』(2018年)、『自白』(2019年)などを手掛けてきたキム・チョルギュ監督が、本作で第57回百想芸術大賞演出賞を受賞。脚本は本作が初のミニシリーズとなったユ・ジョンヒだ。緊張感を切れさせないサスペンスと純愛ロマンスの調和が絶妙でテンポもいい。一番身近にいた人が別の人間だったら......という設定自体は真新しいものではないが、甘いだけではないロマンスパートは作品の奥ゆきを深め、考察しても次々と新たな事件が起きて予測不可能な方向に転がるストーリーに息を呑む。観始めたら最後まで止まらないのがランキングに入り続けている理由のひとつだろう。

 主人公の金属工芸作家ペク・ヒソン(イ・ジュンギ)は妻で刑事のチャ・ジウォン(ムン・チェウォン)とかわいい娘ペク・ウナ(チョン・ソヨン)の3人で平凡ながらも幸せに過ごしていた。だがヒソンは名前を変え、素性を隠して生きていたのだ。ところが、ジウォンはひょんなことから知り合いの記者キム・ムジン(ソ・ヒョヌ)にヒソンを紹介し、ムジンがヒソンの工房を訪れたことで平穏な日々が崩れ始めていく......。

 自分の感情を感じることができずに笑顔や幸せな表情を真似てきたヒソンは、愛することさえも演じてきた。しかし家事や育児を完璧にこなし、妻と娘に愛情を注ぐ姿は誰が見ても良き夫だ。彼を疑いながらも信じたくなる気持ちにもさせられる二面性を巧みに演じていたのが、イ・ジュンギである。わかりやすい極端な演じ分けではなく、とても繊細な感情表現は、視聴者の間で“神演技”と賞賛の声が多く聞かれた。ドラマの要となるイ・ジュンギが創り上げた、ペク・ヒソンというキャラクターに圧倒されること間違いなしだ。

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