中谷美紀「とても苦しい役柄だった」 『ギバーテイカー』設定変更の裏側を明かす

『ギバーテイカー』設定変更の裏側を明かす

 1月22日よりWOWOWにて放送・配信される中谷美紀主演の『連続ドラマW ギバーテイカー』の現場レポートが到着した。

 『ライフ』のすえのぶけいこ初の青年誌連載作品『ライフ2 ギバーテイカー』(講談社アフタヌーンKC)を原作とした本作は、娘を殺された刑事と、その娘を殺した猟奇的殺人犯が繰り広げる死闘を描いたクライムサスペンス。原作の設定である“妹が殺された刑事”を、“娘が殺された刑事”へと変更。中谷が『連続ドラマW 東野圭吾 片想い』以来2度目となるWOWOWドラマ主演を務める。

 監督を務めるのは、WOWOW開局25周年記念『連続ドラマW 沈まぬ太陽』『WOWOWオリジナルドラマ ヒル』『連続ドラマW シャイロックの子供たち』の鈴木浩介。脚本は、『連続ドラマW 黒鳥の湖』などの小峯裕之が手がけた。

 黒のパンツスーツに身を包み現れた中谷。持ち前の凛とした美しい眼差しを輝かせるが、その瞳の奥には娘の命を理不尽に奪われた悲しみと怒りをたたえている。

 抱える絶望を映し出すような倉澤(中谷美紀)の簡素な自宅に、一人佇む中谷の姿を見ながら、監督を務める鈴木は「倉澤の心象が置き去りにならないように書かれた脚本も素晴らしいが、それを表現する中谷さんは本当に凄い」と惚れ惚れ。中谷は残酷なほど静かな空気をまとい、見事に母としての悲しみを体現していた。

 その自宅にある日、ルオトからと思われるメッセージが届く。玄関先に届けられたのは、娘をルオトに奪われた日を思い出させる風鈴と、彼の存在を示すアメの包み紙。アメの包み紙に書かれた「あなたの大事なものを、もう一度奪います」との言葉を目にした倉澤の恐怖と驚きを、中谷は呼吸を乱れさせながら表現し、その迫力に撮影現場にも緊張が走る。

 倉澤がアメの包み紙を拾う場面は、手元がカメラにうまく映るようにしなければならないため、体の向きやタイミングなど、細かい動作の調整が必要だった。中谷が気合を入れ、見事に一発で決めて笑顔を弾けさせると、スタッフも歓喜。劇中では笑顔を封印している中谷だが、撮影の合間は笑顔でスタッフと交流をはかり、隅々まで声をかけ、座長として終始現場を和ませていた。中谷は「監督がすごいんです。スタッフさんの皆さんも優秀な方ばかり」とメリハリのある現場で、チームワークを感じながら撮影に臨んでいた。

 普段は冷静を保つよう努めている倉澤だが「命を奪うものを許さない」という強い怒りが抑えられなくなると、後先を考えずに行動してしまうため、他の刑事たちからは煙たがられることも多いキャラクターだ。そんな倉澤にとって良き相棒となっていくのが、池内博之演じる刑事・今井要。中谷と池内の芝居を見ながら鈴木は「いいコンビだな」と思わず笑顔をこぼす。次第に信頼を築いていく様や、物語終盤に登場する倉澤が自責の念を今井に吐露し、頑なな心をほどく表情を見せるシーンなど、倉澤と今井のシーンの撮影は順調に進んでいった。

 今回のドラマで中谷と鈴木は初タッグ。中谷は鈴木へ撮影前から絶大な信頼を寄せ、「鈴木監督は驚くほど引き出しの多い方なのですが、ご自身で組み立てた演出案を持ちながら、“私たちが何をご提示できるのか“をきちんと聞いてくださって、“これをやりなさい”ではなく、インフォームドコンセントを元に常にシーンを作られています。俳優の心情を捉え、私たちがどうしたいのか、どうしたらその心情で動けるかまで考えてくださっているので、大変な役柄であるにも関わらず、楽な気持ちで演じさせていただきました」とコメント。そんな中谷との出会いを「初めてご一緒する作品がこの作品で良かったです」と感慨深く鈴木は語り、「スケジュールを管理するスタッフが、こだわって撮影を行う順番を組んでくれたおかげで、日毎に倉澤像が具現化していく様子を間近で感じることができました。特に中谷さんが奏でる台詞の数々がとても心地よかったです」と充実した撮影を振り返る。
撮影は元刑事が警察監修として参加し、捜査会議のシーンひとつ取っても、刑事たちのセリフだけではなく、資料の並べ方や会議の雰囲気まで細かくチェックが入り、刑事モノとしてのリアリティを追求した。

 今回のドラマ化にあたり、原作の“妹が殺された刑事”という倉澤の設定を“娘が殺された刑事”に変更。すえのぶ独特の迫力あるタッチで、エネルギッシュに描き出された原作。単純な正義と悪の図式にあてはめることができない登場人物たちの心情、スリリングな展開に並走して、読む者へ強く訴えかけるメッセージなど、原作の魅力を最大限に活かし、完全映像化を目指すにあたっての糸口として、導き出されたのがこの主人公の設定変更だった。全5話と限られた時間の中で、原作本来の魅力に加えて、社会派ドラマを多く生み出してきた「連続ドラマW」としての魅力を上乗せ、被害者遺族と真摯に向き合いながら、再犯率の高い少年犯罪という社会的難題に切り込み描き切る、その強い意志を持って、エンターテインメントとしての娯楽性を両立させることを目指し、本企画は動き出した。脚本を手掛けた小峯は「重いテーマをスピーディーかつスリリングに見せる、唯一無二の魅力を持った漫画だなと感じました。漫画というメディアの特性を最大限活かした作品とも言えるので、実写化するにはプレッシャーもありました。特にWOWOWの『連続ドラマW』は重厚な世界感の構築が求められるので、捜査過程の描写や人物の心情の掘り下げなど、リアリティを突き詰める必要がありましたが、原作に芯が通っていたので、迷いはさほどありませんでした」と当時を振り返る。

 設定変更することによって、原作に登場する被害者の姉である主人公、そして被害者の母親、父親の3人が背負う被害者遺族としての絶望や葛藤を、主人公を演じる俳優はひとり背負うこととなった。言葉にならない悲しみ、苦しみを抱え込んだまま、絶望の中で時を止め、怒りに震える過酷な人生を歩むことを選択した難役・倉澤を体現することのできる唯一の人物が中谷だ。「中谷さんがオファーを受けてくださると聞いた瞬間、『連続ドラマW』本来のテイストと、『ギバーテイカー』のマッチング度数がメーターを振り切ったなと思いました」と鈴木。小峯も「中谷さんが演じてくださったという点に大きな意味があると感じています。実写として主人公の苦悩、葛藤、奮闘を表現し切ることは難しく思えましたが、中谷さんは丁寧に役作りをし、第1話の脚本を読んだ段階からシーン追加の提案などもしてくださいました。役に向き合うストイックな姿勢と確かな演技力によって、作品に説得力を与えてくださったと感じています」と語る。

 倉澤役は、これまであらゆる難役を演じてきた中谷にとっても、引き受けるまでに覚悟を要するようなキャラクターだった。中谷は「私にこの役が務まるのかと、正直なところ不安が大きかったのですが、いただいた台本を読んで、不安が払拭されました。ハラハラ、ドキドキさせられるめくるめく展開でありながらも、セリフにはできない領域が大切に描かれている台本で、心情が置き去りにされることがなく大切に表現されていたため、“早く続きが読みたい”と瞬く間にページを読み進めてしまいました」と脚本に込められた熱気に背中を押され、倉澤として生きる決心をしたと言う。

 「“自分の娘を自分が教えていた学校の生徒に殺されてしまう”という壮絶な過去を持ち、怒り、憎しみ、悲しみ、絶望と、ありとあらゆる感情が綯交ぜである上に、事件の捜査が進むにつれて、自分の周囲の人間がどんどん事件に巻き込まれてしまう。常に自責の念が付きまとう、とても苦しい役柄だと思っています」と中谷がコメントするように、“被害者遺族”でありつつ、“刑事”である倉澤の心の中には、さまざまな感情が渦巻いている。クールな刑事とも違う、犯罪者への抑えきれぬ怒りを原動力に変え、奔走する倉澤役は“カッコいい女性”の代表格である中谷にとっても、新たな“顔”を見せる役柄となった。

『連続ドラマW ギバーテイカー』特別映像

■放送情報
「『連続ドラマW ギバーテイカー』放送記念!女優 中谷美紀」
WOWOWシネマにて、1月22日(日)放送
8:30~『BeRLiN』
10:25~『電車男』
12:15~『嫌われ松子の一生』
14:35~『繕い裁つ人』
16:30~『総理の夫』

『連続ドラマW ギバーテイカー』(全5話)
WOWOWにて、1月22日(日)放送・配信スタート
【放送】WOWOWプライム、WOWOW4Kにて、毎週日曜22:00〜放送
【配信】WOWOWオンデマンド
主演:中谷美紀、菊池風磨、深川麻衣、馬場ふみか、吉沢悠、斉藤由貴、池内博之
原作:すえのぶけいこ『ライフ2 ギバーテイカー』(講談社アフタヌーンKC)
脚本:小峯裕之
監督:鈴木浩介
音楽:林ゆうき、奥野大樹
チーフプロデューサー:青木泰憲
プロデューサー:小林祐介、黒沢淳、雫石瑞穂
制作協力:テレパック
製作著作:WOWOW
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/givertaker/ 
公式Twitter:@drama_wowow

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