『灰原哀物語』は安室透の魅力もギュッと詰まった一作 コナンフリークが楽しめる演出も?

『灰原哀物語』安室透の魅力が詰まった総集編

 2022年に劇場公開された『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』がシリーズ最高の97.8億円を記録し、国民的ミステリー作品として不動の地位を誇る『名探偵コナン』シリーズ。今春公開の『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の情報も徐々に解禁される中、『黒鉄の魚影』公開に先駆けて1月6日より全国の映画館で公開された『名探偵コナン 灰原哀物語 〜黒鉄のミステリートレイン〜』が人気を博している。

 『灰原哀物語』は、『黒鉄の魚影』でもキーパーソンとなるキャラクター、灰原哀を軸としたテレビシリーズの特別編集版。昨年の『ハロウィンの花嫁』公開時に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送された『本庁の刑事恋物語 〜結婚前夜〜』や、一昨年の『緋色の弾丸』時に劇場公開された『緋色の不在証明』など、テレビエピソードの総集編作品は劇場版『名探偵コナン』の新作公開時の新しい風物詩になりつつある。

<TVシリーズ特別編集版>「名探偵コナン 灰原哀物語~黒鉄のミステリートレイン~」上映告知映像【2023年1月6日(金)公開】

 今回の『灰原哀物語』は、ファンからの人気が高いエピソードである『漆黒の特急(ミステリートレイン)』を核としながら、灰原哀のこれまでの足跡を辿るような構成となっている。映画は灰原が初登場した『黒の組織から来た女 大学教授殺人事件』から始まる。『名探偵コナン』という作品にとって文字通りターニングポイントとなったこのエピソードは、灰原哀の登場だけでなく、コナンが飲まされた薬の名前、そして以前のエピソードで組織の手により殺害された宮野明美が灰原哀=宮野志保の実姉であったことなど、その後も物語の重要なカギとなる多くの真実が明らかとなる。

 その後も組織の手から逃れたばかりで周りの人間とは馴染めない灰原の手を取るコナンの姿が印象的に映る『競技場無差別脅迫事件』や、灰原が科学者としての頭脳を活かし事件解決の糸口を掴んでみせた『青の古城探索事件』。灰原にとって初めて黒の組織との対決となった『黒の組織との再会』、赤井秀一が初登場したエピソードでもあり、自身の生命と引き換えに組織が自身の周囲の人間から手を引くと考えた灰原と、そんな灰原の身を挺して助け出したコナンのそれぞれの考えがなんとも切ない雰囲気を醸し出す『謎めいた乗客』といった、初期のエピソードを中心に灰原の活躍がギュっと詰め込まれた、このタイミングだからこそ振り返りたい灰原の名シーンが満載の総集編に仕上がっている。

 今回の映画のメインエピソードとなる『漆黒の特急』は『名探偵コナン』の名物キャラクター、阿笠博士の名前の由来にもなったイギリスの推理小説家、アガサ・クリスティの代表作『オリエント急行殺人事件』さながら、行き先不明のミステリートレインの車内で巻き起こる不可解な密室殺人をコナンや世良真純が解決に導きながら、その裏で起こる灰原を巡る黒ずくめの組織とコナンたちの頭脳戦を描く長編エピソード。この『漆黒の特急』最大の見せ場はやはり、ベールに包まれていた安室透の正体が判明する瞬間だろう。近年の『名探偵コナン』屈指の人気キャラであり、『ハロウィンの花嫁』でも活躍を見せ、『黒鉄の魚影』への登場にも期待が高まる安室。この『漆黒の特急』当時はいわゆる『バーボン編』のクライマックスで、安室はまだその正体がベールに包まれていた。そんな安室の今は見せることの少なくなったミステリアスな暗躍ぶりに注目してほしい。

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 そして世良真純や沖矢昴ら、安室と同様当時はまだまだ謎めいていたキャラクターたちの様々な思惑が交差し合うストーリー展開、工藤新一の実の母である工藤有希子とシャロン・ヴィンヤードことベルモットの女優対決も是非観てほしいポイントだ。また思いもよらないキャラクターの登場も……? アッと驚くような豪華なキャスティングから目が離せない。

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