『夕暮れに、手をつなぐ』広瀬すず演じる空豆の不思議な魅力 永瀬廉との空気が心地いい

『夕暮れに、手をつなぐ』広瀬すずの演技力

 広瀬すずが主演を務める『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)が、1月17日よりスタートした。

 「世界で一番美しいラブストーリー」「とっくに、恋に落ちていた」――そんなキャッチコピーがついている本作は、九州の片田舎で育った浅葱空豆(広瀬すず)が、幼なじみの婚約者を追って上京した先で、音楽家を目指す青年・海野音(永瀬廉)と運命的で衝撃的な出逢いを果たすことから始まる、北川悦吏子が『オレンジデイズ』(TBS系)以来19年ぶりに完全オリジナル脚本として手がけた青春ラブストーリーだ。

 まず観ていて強く感じるのは、作品全体に流れる温かく、澄んだ空気だ。それは演出でもあり、美麗な映像の撮り方でもあり、久々に青春ラブストーリーに挑もうとした北川の脚本でもあるだろうが、演じる広瀬すずと永瀬廉が最もその要素を担っているような気がする。

 北川自身が念願叶って広瀬と永瀬に当て書きしたという、浅葱空豆と海野音という役柄。空豆はエネルギッシュでいて、どこかほっとけない人を惹きつける不思議な魅力を持った人物だ。宮崎、鹿児島、長崎の方言をブレンドしたというオリジナルの九州弁をはじめ、その人物像は、例えば連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK総合)の鈴愛(永野芽郁)を彷彿とさせるような、野生児とも言える後先考えない自由奔放で純真なキャラクター。けれど、裏を返せば寂しがり屋で、打たれ弱い面も持ち合わせている。一度フラれたはずの幼なじみ・矢野翔太(櫻井海音)からの連絡に淡い望みを抱き、トドメを刺されに行くシーンは、空豆のその相反する面がごちゃ混ぜになった場面のようにも思えた。広瀬すず自身も演じたことのないというここまで躍動的な人物を、ナチュラルに見せる彼女の演技力の高さに改めて驚かされもした。

 そんな空豆の持つ求心力に知らず知らずのうちに突き動かされていく音。音楽家としての野心に燃えているものの、実力としてはまだ認められてはいない。物語における立ち位置(第1話時点では)としては、空豆に対しての“受け“であるが、彼女との会話のテンポ感や醸し出される空気が何とも心地いい。翔太から貰った大事な指輪を川に落としてしまった空豆をホテルまでおぶって帰るシーン、そして、音が“優しい嘘“をついて空豆を九州に帰そうとするものの、本心では別れを拒んでいるかのような音の複雑な表情。優しさの裏に併せ持つ切なさや悲しさ――主演を張った『わげもん〜長崎通訳異聞〜』(NHK総合)や連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)でも存分に発揮されていた永瀬廉の演技が十二分に生かされる役柄のように思える。

 「とっくに、恋に落ちていた」というキャッチコピーとは裏腹に、2人の恋愛が始まる気配は実はまだない。どちらかといえば仲のいい友達のような、居心地のいい兄妹のような関係に近いのかもしれない。音は「あんま人を好きにならない」とも言っていた。ここからどのようにして2人が“恋に落ちていた“ことに気づくのか、やがて手を伸ばしていく何者かになっていくのか。『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』(TBS系)、『オレンジデイズ』に続く、青春ラブストーリーが今幕を開けた。

■放送情報
火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:広瀬すず、永瀬廉(King & Prince)、川上洋平([Alexandros])、松本若菜、田辺桃子、黒羽麻璃央、伊原六花、内田理央、櫻井海音、茅島成美、酒向芳、遠藤憲一、夏木マリ
脚本:北川悦吏子
演出:金井紘、山内大典(共同テレビジョン)、淵上正人(共同テレビジョン)
プロデューサー:植田博樹、関川友理、橋本芙美(共同テレビ)、久松大地(共同テレビ)
編成:三浦萌
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:TBS
©︎TBS
公式Twitter:@yugure_tbs
公式Instagram:yugure_tbs
公式TikTok:@yugure_tbs

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