『PICU』で知る、厳しすぎる医療の現実 吉沢亮が問いかける“正しいとは何なのか”

『PICU』で知る、厳しすぎる医療の現実

希望が詰まった子どもの命と同じく、誰の命も尊く愛しい

 次々と襲いかかる厳しすぎる現実に、しこちゃん先生の心が折れずに済んだのは、彼の周囲にいる母親と家族同然の幼なじみの存在が大きい。女手一つで育ててくれた母・南(大竹しのぶ)に、同じく医師である矢野悠太(高杉真宙)、河本舞(菅野莉央)、そして南と共にバスガイドを手掛けている涌井桃子(生田絵梨花)。

 彼らはよく食べる。それが辛い現実と戦うエネルギーになるから。しこちゃん先生の自宅で南と共にとる食事のシーンは、医療現場で張り詰めた緊張が解き放たれる大事な瞬間だ。だが、そんなしこちゃん先生にとって羽を休める場所にも、何が正しいのかという問いかけが待っている。

 救急救命医となったことで、自分の心身の健康を省みる日まもなく身を粉にして働き続ける悠太。何事も真正面からぶつかっていくしこちゃん先生に対して「私たちじゃどうにもできないことがある」とドライに割り切っていく舞。そして、南の深刻な体調不良について「武四郎には言わないで」と口止めされた桃子。

 しこちゃん先生が直面している医療現場だけでなく、きっと私たちの人生もまた「反省して、分析して」の繰り返し。たった1つの自分の命を、どう使って生ききるのか。おそらくどんな決断をしたとしても、悔いは残るのだろう。それでも精いっぱい、できることなら自分に正直に、好きな人との時間を大切に生きたい。

 つい忘れがちになってしまうが、PICUで懸命に救おうとしている子どもの命と同じように、働きざかりの成人の命も、長く生きた人生の先輩の命も等しく、尊く愛しいのだから。しこちゃん先生が少年に修学旅行の再現で教えてくれたように、私たちはこの『PICU』というドラマを通じて、自分と親しい人の命の可能性について考え、前向きに生きる元気をもらえるような気がする。

 物語は、いよいよ母の病をしこちゃん先生が知ってしまうという、大きな山場を迎えた。私たちはいつかは必ず死を迎える。そんな現実は十分知っているはずなのに、どこかでその「いつか」は来ないものだと思いたくて、気づかぬふりをしてしまう。それは今の生活が温かく幸せな瞬間であるほどに。

 多くの命の終わりに対峙する医師として、しこちゃん先生が最愛の人の命とどのように向き合っていくのか。悠太のときに比べて、成長したマインドを見せてくれるのだろうか。結末の想像ができないクライマックスに向けて、涙をぬぐうティッシュをたくさん用意しておきたいと思う。

■放送情報
『PICU 小児集中治療室』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:吉沢亮、木村文乃、安田顕、生田絵梨花、高杉真宙、菅野莉央、甲本雅裕、中尾明慶、高梨臨、菊地凛子、正名僕蔵、松尾諭、大竹しのぶほか
脚本:倉光泰子
演出:平野眞
プロデュース:金城綾香
医療監修:浮山越史(杏林大学病院)、渡邉佳子(杏林大学病院)
主題歌:中島みゆき「俱に」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
音楽:眞鍋昭大
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/PICU/
公式Twitter:@PICU_cx
公式Instagram:@picu_cx

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