『チェンソーマン』ループ回を参考映画から読み解く コベニの“ぐちゃ顔”も大活躍
あらゆる“ループもの”において共通するのは、同じ場所に閉じ込められるからこそ背景も登場人物の顔ぶれも変わらない、その悪条件の中で観客を飽きさせてはいけないというリスクを抱えていることだ。だからこそ、今回の第6話のように魚眼レンズなど、様々な効果のカメラを駆使することで同じ空間を違う形で見せることが大事だ。そして空間の見せ方の工夫以外に大切なのが、登場人物の様々な顔を映すこと。彼らの表情の変化や動き、そして知られざる内面や過去の開示など、キャラクターにいろんな表情を持たせることなのだ。コベニちゃんはまさにその役割を担っていて、顔の穴全部から液体がずっと流れ出ているのかと錯覚してしまうくらい、一人でずっとぐっちゃぐちゃな顔をしていた。チームの中で常識人ぶっていた荒井も、“まとも”だからこそ精神がやられてしまったのが良い。結局のところ、あの状況下で普通に動けていたメンバーは“イカれていて”、デビルハンターに向いている側の人間なのである。とはいえ、コベニちゃんは姫野から「引っ込み思案だけどかなり動ける」と高く評価されているので、私たちはまだ彼女の“本領”を知らない。
姫野といえば、閉じ込められた空間におけるキャラクターの内面・過去の開示部分を担った人物だ。タバコを巡る、アキとの関係性。死んだバディの彼女に殴られた姫野のために、殴った相手にガムをつけてきたというアキ。そんな彼の姿が、姫野の瞳の中に入る。この『チェンソーマン』では瞳の中に入った人間に囚われてしまう、という演出が通底して行われるようになるのかもしれない。
さて、永遠の悪魔を倒す方法として「自殺させる」という選択肢をとったデンジ。苦痛を永遠に与えられるのは割に合わないから、相手にも永遠の苦痛をお返しする。パワーの言葉を借りると「悪魔的な考え」だが、その発想は参考映画『パラドクス』を観ると俄然気持ちの良いものに感じる。もしかするとレンタル店にしかないかもしれないが、次回の放送を楽しみに待つ間、興味が湧いたらそちらもぜひ観てほしい。
■放送・配信情報
『チェンソーマン』
テレビ東京ほかにて、毎週火曜24:00〜放送
Amazon Prime Videoにて、毎週火曜25:00〜最速配信
各プラットフォームにて、毎週水曜25:00〜見逃し配信
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(早川アキ)、ファイルーズあい(パワー)、伊瀬茉莉也(姫野)、高橋花林(東山コベニ)、八代拓(荒井ヒロカズ)、津田健次郎(岸辺)、内田真礼(天使の悪魔)、花江夏樹(サメの魔人)、内田夕夜(暴力の魔人)、後藤沙緒里(蜘蛛の悪魔)、大地葉(沢渡アカネ)、濱野大輝(サムライソード)
原作:藤本タツキ(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:中山竜
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
アクションディレクター:吉原達矢
チーフ演出:中園真登
悪魔デザイン:押山清高
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
画面設計:宮原洋平
音楽:牛尾憲輔
オープニング・テーマ:米津玄師「KICK BACK」
挿入歌:マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
エンディング・テーマ:
ano「ちゅ、多様性。」
Eve「ファイトソング」
Aimer「Deep down」
Kanaria「大脳的なランデブー」
syudou「インザバックルーム」
女王蜂「バイオレンス」
ずっと真夜中でいいのに。「残機」
TK from 凛として時雨「first death」
TOOBOE「錠剤」
Vaundy「CHAINSAW BLOOD」
PEOPLE 1「DOGLAND」
マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
アニメーションプロデューサー:瀬下恵介
制作:MAPPA
©藤本タツキ/集英社・MAPPA
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式Twitter:@CHAINSAWMAN_PR